愛の短歌

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 濡れ烏なんて今の俺、そのまんまだろ?  ググれよは、よく言われたからな!  短パン短歌はいい得て妙だろう。俺も美夜子も暑がりで、並んで短パンいつでも短パンだったからな。  腹は出してないか?  ……もう、痛みや辛さはないか?  俺は辛いよ。 「薄れゆく君の香りを探しては       遺品整理が進まぬ日々よ」    空気を入れ替えたら、どこからか美夜子の匂いがしてさ、馬鹿な俺は大声で名前を呼んじまうんだ。  あの匂い攻撃は卑怯じゃないか。油断している時に限ってなんだからなぁ。  美夜子が使っていたシャンプーも、しばらく俺が使ってた。勿体ないからもあるけど、結局最後まで使えなかったよ。  底に残ったシャンプーがなくなると、きっとたまらなく寂しい気持ちになるだろうからと。  自分の髪からふわっと香る馴染んだ香りは、もっと俺のメンタルを削いでくれたけどな。だから今でも風呂場には、少しだけ残った美夜子のシャンプーが置いてある。  なぁ、美夜子。  今夜は俺が、海鮮ひよひよおでんを作ってやるよ。  レシピは冷蔵庫に貼ってある。入院中に書いてくれたレシピは、まぁまぁ役に立ってるぞ!  適量ってのがいまいちわからなくて、毎回個性的な仕上がりになるがな。  そのうちミシュランのシェフ並に、星をもらえるかもな。 「レシピ表 滲んだ文字をそっと撫で         隠し味にはしょっぱい涙」
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