愛の短歌

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 美夜子(みやこ)が口をきいてくれなくなって2週間がたった。何に不貞腐れていやがるのか、文句があるなら言えばいいのに。  何のために口があるんだよ。高い肉やスイーツとやらをガバガバ食べるだけか、その口は。  何度も「どうした?」「具合でも悪いのか?」「何が不満だ?」と、仕事で疲れた俺に言わせるなよ。まぁ、言ったの3回くらいだけど。  長い年月夫婦をやっていれば、こんな事もあるさ。そのうち飽きて、何事もなかったかのように話しかけてくるだろうさ。って……もう1ヶ月か……。  まさか熟年離婚の前哨戦か!?  俺の定年を待っている?  待て待て、定年しても退職金は渡さねえ。俺の仕事に退職金なんかない。  定年お疲れ祝い金が支給されるだけだぞ?  それを狙っているのか、美夜子は。血も涙もない女だな……。  あ、また無視しやがって……。  今夜はビシッと言ってやるさ、ビシッとな。 「美夜子」 「…………」 「いつまで口をきかないつもりだ!いい加減にしろ!」  ど、ど、どうよ?少しは堪えただろ。 「カァカァと羽を逆立て濡れ烏       濡れ落ち葉なら掃いて捨てれる」
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