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「どうしたの。遠慮なく選んでいいよ」
教授の言葉にはっとして、ふみこちゃんの面影は消し飛んだ。私は気後れしたようにメニューを眺め、か細い声で、
「先生と同じでもよろしいですか。私、よくわからなくて」
と答えた。教授は何がおかしいのか高笑いをして、
「そうだね、当然だよ」
と頷いた。
本当はわからないわけではない。私がつき合った男たちは小金を持ち、かつ女性に奢ることに特別の満足を感じるような類の連中だった。高校の頃から、私は彼らを通じて、それまでの私には無縁であった世界のことを知っていった。そういうことを知ることは彼らが私に使うお金以上に、私にとっては重要であったから。
私は修道院で用意されていたもの以外に、特別の口座をつくり、お金をコツコツとため続けていた。けれど、お金だけでは気づけないことがある。できるだけ私は、彼らにつき合い、彼らのアクセサリーになり、時には欲望のはけ口にもなった。
それは修道院ではけっして学ぶことのできないものだったから。
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