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「ああ、そうか。ちょっと雰囲気が違っていたものだから。本当に、女子学生さんはね……」
世慣れていない教授は取り繕おうとして、つい余計なことまでしゃべりそうになる。下らないおべんちゃらまで言わせるのも気に入らなくて、私は話をさえぎる。
「あらためて、先生にお話を伺いにまいりました。湯原花蓮と申します。今日はお時間をとっていただいて、ありがとうございます」
変わった名前なので心あたりがあったのか、教授は「ああ」と小さく頷いたあと、まじまじと私を見た。
その名に恥じない容姿であることは私がいちばんよく承知している。
教授は最初の戸惑いを克服したように、紳士的な笑みを浮かべた。
「どうもね、研究室というのは、わりと自由に使える場所だから、むさくるしくて申し訳ないな」
「それでしたら、もしよろしければ、外でお話しさせていただいても?」
教授は私の眼差しをちらりと盗み見て、
「そうだね、時間もとるようだし、もう少し静かで落ち着く場所で」
と言いかけるが、
「あら、ファミレスで構いません。私にとってはまじめなお話なんですけど、なにも秘匿するようなものではないですし。東門を出たところに新しいファミレスが」
「いや、それは申し訳ないよ。ここは私に任せておいて」
教授は手慣れたように目配せして見せた。
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