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「真面目な話はあとでいいかね。まずは空腹を満たしておこう。今日はお昼はどこでとったの?」
「サンドウィッチを」
「それでは、そろそろ腹も空いてくるころだろう」
私は空腹を感じることは滅多にない。修道院での居候時代から空腹には慣れてしまった。
立派な石造りの建物の横に建てられた施設。食事が来るのはいつも遅く、とくに朝は食パンにマーガリンだけ。あとはお茶。昼になる前に学校でお腹が鳴るのが恥ずかしくてうつむいて必死に堪えていた日々。
慈善で送られてくるのは着古したお下がり。それは構わなかった。だけど、クラスで「おこぼれ」「お下がり」と渾名をつけられてからかわれるのには耐えられなかった。
今ならわかる。
孤児の私が、クラスの皆よりも目立って美しく、かつ成績が良いのが気に食わなかったのだ。しかも私は卑屈な真似などしたことがない。それがまた癪にさわったのだろう。形ばかりの「同情」さえ見せず、こちらが恥ずかしくなるような罵声や皮肉を浴びせかける子どもたち。しかも私は分かっていた。彼らがそのようにふるまうのは、彼らの親がそう話しているからなのだ、と。
私は意図的に「友」を持たなかった。小学校ではよく「グループ分け」がされる。私はいつも取り残され、一人だった。それでも泣きべそ一つかかない。
でも、なぜか、一人だけ、私をグループに誘い込む女の子がいた。確か、ふみこちゃんと言ったっけ。よく図書館で本を読んでいるような、運動の苦手な女の子だった。
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