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「え?あ、この弁当?」 「……はい。奥さんの肉じゃが、とっても美味しそうですね」 「そうね。この味に惚れて結婚したようなもんで」 「えっ、そうなんですか?」 (あの絶世の美女の作る、美味しい肉じゃがかぁ……そりゃ惚れますよね?) 「って言うか、それもあるけどね。いろいろ支えてくれてるから」 「……のろけ、ですか?」 菜摘としては、かなり頑張って突っ込んだ。すると、 「まぁね」 頭をかきながら、恥ずかしそうに笑った。  つられて、菜摘も少し声を出して笑う。  少しだけ緊張が解れたかな、というところに、 「えー、楽しそうじゃん。何の話?」 電話を終えた浩美が、戻ってくるなり、2人を交互に見る。 「肉じゃがの話」 菜摘が言うと、 「肉じゃが?……あぁ」 浩美は課長のおかずを見やり、 「課長のプロポーズの言葉、ですもんね?」 「え?」 何が?と浩美を見る菜摘に、 「君の肉じゃがを一生食べたい、でしたっけ?」 と言ってから、イタズラっぽい笑みを課長に向ける。 「やめてくれ。恥ずかしいよ」 課長は照れながら笑っていた。 この時から、菜摘の心には、いつも課長が宿るようになった。
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