22人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「え?あ、この弁当?」
「……はい。奥さんの肉じゃが、とっても美味しそうですね」
「そうね。この味に惚れて結婚したようなもんで」
「えっ、そうなんですか?」
(あの絶世の美女の作る、美味しい肉じゃがかぁ……そりゃ惚れますよね?)
「って言うか、それもあるけどね。いろいろ支えてくれてるから」
「……のろけ、ですか?」
菜摘としては、かなり頑張って突っ込んだ。すると、
「まぁね」
頭をかきながら、恥ずかしそうに笑った。
つられて、菜摘も少し声を出して笑う。
少しだけ緊張が解れたかな、というところに、
「えー、楽しそうじゃん。何の話?」
電話を終えた浩美が、戻ってくるなり、2人を交互に見る。
「肉じゃがの話」
菜摘が言うと、
「肉じゃが?……あぁ」
浩美は課長のおかずを見やり、
「課長のプロポーズの言葉、ですもんね?」
「え?」
何が?と浩美を見る菜摘に、
「君の肉じゃがを一生食べたい、でしたっけ?」
と言ってから、イタズラっぽい笑みを課長に向ける。
「やめてくれ。恥ずかしいよ」
課長は照れながら笑っていた。
この時から、菜摘の心には、いつも課長が宿るようになった。
最初のコメントを投稿しよう!