2/2

22人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 結局、翌週は食事も一緒にしなかった。  その日の夕方、一緒に会社を出た所で、慶一がまたすまなそうな表情で、 「先週はごめんね。その代わり、今日は……」 「あ、いいですよ、無理しなくても。その代わり、今月はクリスマスなんで、その時に埋め合わせしてください」  彼が言い終わらないうちに、菜摘は手で制してそう言っていた。  この1週間、心の中で、楽しみと嫉妬が、寄せては返す波のように入り乱れていた。  帰り際に、一瞬嫉妬の方が勝り、そんなことを言ってしまったのだ。 「……それでいいの?」 「はい。奥さんも待ってるでしょ?」 「……」 「クリスマス、楽しみにしてますから!」  菜摘は、ちょっと頑張ってそう言い残し、速足でその場を去った。  1週間遅れで渡そうと思っていた彼への誕生日プレゼントも、カバンに仕舞ったままで。  もう少しだけ素直だったら、楽しい夜を過ごせたのかもしれない。けれど、心が反応してしまったのだ。  モヤモヤを抱えたまま、菜摘は帰路を急いだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加