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結局、翌週は食事も一緒にしなかった。
その日の夕方、一緒に会社を出た所で、慶一がまたすまなそうな表情で、
「先週はごめんね。その代わり、今日は……」
「あ、いいですよ、無理しなくても。その代わり、今月はクリスマスなんで、その時に埋め合わせしてください」
彼が言い終わらないうちに、菜摘は手で制してそう言っていた。
この1週間、心の中で、楽しみと嫉妬が、寄せては返す波のように入り乱れていた。
帰り際に、一瞬嫉妬の方が勝り、そんなことを言ってしまったのだ。
「……それでいいの?」
「はい。奥さんも待ってるでしょ?」
「……」
「クリスマス、楽しみにしてますから!」
菜摘は、ちょっと頑張ってそう言い残し、速足でその場を去った。
1週間遅れで渡そうと思っていた彼への誕生日プレゼントも、カバンに仕舞ったままで。
もう少しだけ素直だったら、楽しい夜を過ごせたのかもしれない。けれど、心が反応してしまったのだ。
モヤモヤを抱えたまま、菜摘は帰路を急いだ。
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