元カノが復縁したそうにこちらを見ているので、彼の幸せのために身を引こうとしたら意外と溺愛されていました

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◇    休み明け、銀青騎士団に仕事復帰すると、副騎士団長が心配そうに話しかけてきた。  「大丈夫だったか? その感じだとうまくいったようだな。あいつ結構腹黒なとこあるからさ」  聞けば、副騎士団長は、リオンと同級生らしく学生時代はルームメイトだったらしい。  年末年始に休暇が取れたのは、付き合いだしたばかりなのに長期遠征に何度も出させて、と切れられたからもあるらしい。  そしてお詫びとして、リオンへカーネリアの遠征時の状況報告を毎日させられていたそうだ。  つまり連絡しなくても、全部状況は筒抜けだったってことよね……。    一番驚いたのは、アイオラが憂国のハザードの工作員だったことだ。あの事件の後、アイオラはリオンに赤騎士団へ連行され、投獄された。  今は裁判を待っている。都会に出て、リオンを捨てて、付き合った男に愛国主義を植え付けられ、組織へ組み込まれた。  昔の恋人であり、魔法師団副師団長であるリオンを組織に取り込もうと、彼に近づいたということだった。    彼の気持ちを利用して、魔法騎士団の副団長を組織に入れようとするなんて、許せない。  カーネリアは、唇をぎゅっとかみしめる。 「リア、どうしたの? 唇をそんなに強く噛んではだめだろう?」  リオンは、カーネリアの唇を指先でそっとなぞる。   「あ、ちょっと考え事をしていまして……」 「ふぅん?」  まるで何を考えていたかわかっているかのように、リオンはカーネリアを抱きしめる。薄い生地の寝間着なので、リオンの熱い体温を直に感じ取れてしまう。入浴後の彼の肌はしっとりと湿っており、開いた胸元にほほを寄せる。  婚約してからのリオンは、表面的には何も変わらなかった。  カーネリアは騎士団の寮の部屋からすぐにリオンの家へと引っ越しをさせされた。あんなセキュリティが、がばがばな場所にリアを住まわせるわけにはいけないからね、とほほ笑むリオンはとても艶っぽく、今まで見たことのない表情に腰が抜けるかと思った。   「二人で過ごす夜なのに、他のことで心を惑わすなんて、私の愛し方がまだ足りないのかな?」 「そ、そんなことは」    慌てて否定したが、腰へ当てられていた手が、するりと下へと下がっていく。   「リア、昼間のあなたははつらつとしてさわやかで、とてもかわいいのに。夜のあなたは、未熟な私をあおるサキュバスのように魅惑的ですよ」 「ん、くぅ、……あぁ」 「そういうギャップもたまりませんね。リア、愛おしい人。愛しています」  耳元でささやかれる低音ボイスに、体が熱く反応する。毎夜繰り広げられる、ベッドの上での密事を思い出し、潤み始める。 「今日は、どうやって愛せばいいですか? 私のリア、どうかあなたにとらわれて正気を失いつつある哀れな私を導いて下さい」 (正気を失ってしまうのは、いつも私なのに! その色気は一体どこから出てくるのでしょうか!)  きっと睨みながら、見上げる。挑発的に上がる口角とは反対に、真摯な琥珀色が深藍色を様子を伺うように見つめている。  そんな心許なそうな顔をされたら、何も言えないじゃないですか。反則です……。  カーネリアは、リオンを抱きしめ返すと、「今日はずっとくっついていたい気分です……」と消え入りそうな声で答える。  リオンは、精一杯のお誘いに満足そうに笑うと、「仰せのままに」とカーネリアを抱き上げ、寝室の扉を閉めた。
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