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第5話 この夏の魔法は解けない
後、数日で夏休みは終わる。
また仙台で勉学に励む日々に、俺は戻る。
この夏の暑さは惜しい気もしている。
掃除をしつつ、俺は部屋の勉強机の引き出しを数年ぶりに開けた。
そして、宝石もなにもない、ただの銀の指輪を掴んだ。
懐かしい声が聞こえるようだ。
『男同士だから、友情の指輪だな』
『うん。忘れないから、絶対』
中学にあがる時に、ユウキと2人でそろえたものだ。
思い出をかみしめて、俺は帰りの荷物を準備し始めた。
ユウキは何故か、ここ数日、顔を見せてくれない。
うちの母親はまた来年会えるじゃないの、と気楽に笑うだけだった。
心配か。
いや、そういう訳じゃないけど、この夏が名残惜しいんだ。
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