第1話 あの夏へ戻る道を越えて

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 翌日。  ジワッとする暑い朝だった。  うーんと、うめき声をあげて目を開いた。扇風機の風が当たっていない。そのせいか、身体が生温かいような気がする。  いや、誰かが俺の上に馬乗りになっていた。馬にしては小さく、猫にしては大きすぎるというので、人間だろう。  綺麗な茶っ毛を頭のサイドでくくった、薄くメイクをしたぱっちり目の可愛い顔が、嬉しそうに笑った。 「でへ~。キョウくん、おかえり~」 「誰?」  俺は夏の朝で、カサツク声だが、精一杯言う。  茶毛サイドテールっ娘は、ムゥと唸った。アヒル口という、ちょっと怒った感じ。  こんなに可愛い、妹か、知り合いか、いたっけ。  いや俺は、一人っ子で、知り合いの女の子は県外の大学に進学したからなぁ。  夏っぽい白いブラウスはお洒落で、さらに淡いピンク色のスカートが座っている。  センスが良く優しい香水の匂いがした。でもキツい臭いじゃなくて安心感ある。  朝のせいか、下半身がムズムズする。 「ユウキ、ミモリユウキだよ」  甘い声が名前を告げる。  三森(ミモリ)祐季(ユウキ)は幼馴染だった。やんちゃな奴で、2人で子供らしい悪事をたくさんしたもんだ。  だが、下半身のうずきが止まった。  そう、だ。
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