第2話 あの夏へ戻る準備

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 すると、ユウキは難しい顔で俺の顔を見つめた。怒っていらっしゃるのか。 「怒っていないよ。ちゃんと忘れないで、帰って来たからね、3年ぶりに!」 「怒っているじゃないか」  俺はコップを机に置いた。  ユウキは俺の右手をそっと両手で包み込んだ。心配そうな顔をしている。 「私は看護学生になったんだ。だから、キョウくん、そんな疲れた顔していると分かっちゃうんだよ。ずっと向こうで無理していたんじゃない」 「そんなことッ!……」  驚いて声を荒らげるわりに、やっぱり言葉が続かない。  それより、俺はどうしてしまったんだろう。意識的に向こうでの生活を忘れようとしているようだ。  実際に心身ともに疲れているので、否定できなかったのかもしれない。  頑張って話そうとするが、魔法で記憶を消されたように、口が動かない。  ユウキは首を左右に振って、ダメっと優しく諭した。 「キョウくん、向こうで変わろうと急ぎ過ぎたんだよ。でも、この街は変わっていないよ。だからさ、夏の魔法であの頃に戻ろうよ」 「うーん、あぁ、悪くないかもなぁ」  あの頃は何をしても楽しかった。  真夏の日。2人で網をもって、虫を追いかけた。川で石を転がし、水辺の生き物を観察した。  バスケットボールも河川敷のコートでしたし、疲れたら家の庭で青いアイスをかじった。  でも、20歳という大学生同士でする遊びか、それ。
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