第3話 あの夏の懐かしい遊び

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京一郎(キョウイチロウ)! おい、大丈夫かよ!」  作っていた甘い声でなく、青年の声がブラックアウトする視界で聞こえた。  そうだよな。  ユウキだって、もう大人の男性になっているんだ。  何だか、あの夏の魔法が解ける瞬間だとわかっていても、俺は目を閉じたまま、薄らと涙を流してしまう。  もう戻れないあの夏の日だと分かっている。今更、ふざけて、夏休みごっこをして大人げなかった。  都会に負けて帰って来ても、母やユウキは優しく迎えてくれる。  それだけが最後の砦で、心の支えだと、勝手に俺は思っていたんだ。 「魔法……解けるなよ……」  俺が俺でなくなってしまう。  暗闇をさまよっていても、どこに帰ればいいかわからなくなる。  それだけは怖い。 「大丈夫。君の帰る場所は、私が守っているからさ」  黒い闇の向こうから、優しい声が聞こえた。  俺を否定するわけでもなく、俺を昔の、あの頃のようにただ受け入れてくれた。
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