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猫の手も借りたい気持ちなのかも知れず、再び書庫の片付け要員を募集するのだろう。でも、アルバイトならサボってはいけない。
「いや、正式雇用って訳でもないんで……。夏休みで、友達の家に泊まったついでにね、手伝わされた? みたいな感じなんですよ。ま、お世話になってるんで。どうするよ?」
雅ちゃんや渥視が心配し、淳に話し掛け、どうして出前して来たのか経緯を話す声に、ケラケラ笑い転げているエミちゃんでさえ、中華屋のアルバイトですらなかったようで、私は向かいの寂れた八百屋の店番があると、単車のキーを指で回しながら言うのだった。
「恋できるかもよ? まぁ、何事も挑戦さ」
「昨夜も挑戦させられたんだって、ねえ!」
「結果は見えてんだ。でも食っちゃったし」
もう何が何やら分からない珍妙な状況だ。
「あの、貴女、八百屋の看板娘さんですか」
どうしてか、帰ろうとする少女をパッと、呼び止める声や引き止める焦った声がした。
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