* 幻想奇譚 蒼い百合と赤茄子

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* 幻想奇譚 蒼い百合と赤茄子

表題『セルリアンブルーの夢幻境(féerie)』 著者 花霞(かすみ) (けい) ◇ご案内◇ 読者の皆様、ご閲覧ありがとうございます。ここから幻想奇譚(きたん)も挟み挟み掲載しますが、センセーショナルな内容には御注意下さい。 ※著者は登場人物のエイダンのペンネームとなっていますが、作者は閏間(うるま)菊絵(きくえ)本人です。物語上の設定上、紛らわしくてすみません。 ※作中の内容についてはフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在するものとは一切、関係ございません。 ◇◇◇第一章  雲間紅日陰(クモマベニヒカゲ)反魂草(ハンゴンソウ)の野山に舞っている。黒地に緋色(ひいろ)(じゃ)()のある蝶の(はね)を広げて。透き通る青春は夏の夢幻に蘇ってやまない。  (みつ)の匂いを感じながら、ふと思い返すが、故郷の裏山にあった天空の花(、、、、)は良い香りで、薬効にだけ特化された温室にはそぐわない、鉄砲百合に似た鮮やかな芳香を持っていた。どんな花か思い出せないが水仙(スイセン)にも似た花。(かぶ)が持ち去られたのはいつのことだったか。  離れの百合も木槿(ムクゲ)も夜顔も、花色は(あお)い。特に百合は姥百合(ウバユリ)にも似て、香りは芳潤(ほうじゅん)だ。透百合(スカシユリ)笹百合(ササユリ)に加え、天然の青色色素か、何かを掛け合わせたのだろうと思うけれど、その草花は大親父が丹精(たんせい)して育てたものだ。
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