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────「アー! アー!」
「ふふ、杏ちゃん可愛い」
無事に挨拶が終わって、リビングで杏ちゃんをあやしている時。
部長はうっとりした瞳で私達を見つめる。
「……ああ、可愛いなぁ」
「ね。杏ちゃん、本当に癒される」
キョトンと目を丸くする杏ちゃんに微笑みかける。
「うん。杏ちゃんが可愛いのはもちろんなんだけど。……杏ちゃんを可愛がるさくらが可愛いなって」
「………………」
「………………」
恍惚とした笑みを浮かべる部長。
彼のキャラの濃さを思い知ったのか、家族は一瞬動きが止まった。
「真澄さんにも抱っこしてもらおうか」
桃花が杏ちゃんを抱き上げ、部長の腕に近づける。
部長は少し狼狽えながらも、恐る恐る杏ちゃんを抱っこした。
「ああ……可愛いな」
杏ちゃんを見下ろし、微笑んだ瞬間。
「はうあ!」
電流が走ったかのような衝撃が身体中に広がる。
彼に目を奪われ、けたたましく鼓動が動いた。
「あ……ギャップ……」
今まで見たことのない彼の表情。
父性を感じさせる、包み込むような愛情深い微笑み。
……また新たな性癖に刺さった瞬間だった。
「どうしたの? さくら」
まだまだありそうな、見たことのない彼の表情。
それを知れるなら、私はどんなことも乗り越えられる気がする。
「部長……結婚してください」
「本当に!?」
部長のギャップは、どこまでも果てしない。
【おしまい】
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