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────「あの、部長」
ホテルの一室、お互いシャワーを浴びてバスローブ姿になった後、急激に酔いがさめたように冷や汗が噴き出た。
「どうしました?」
あまりにも平然と、この場にいる部長に面食らう。
そりゃ、誘ったのは私だけど、部長がこんなに柔軟に対応してくれるなんて。
あのほんわか部長だったら、「どうしたんですか東城さん! 落ち着いてください!」なんて焦りそうなものなのに。
「もしかして僕の勘違いですか?」
ベッドに腰かけ始める部長に心臓が飛び跳ねる。
「ち、違いません! 違いませんけど……」
「東城さん」
手招きされて、私もベッドに腰を下ろす。
ずいと迫られて、今度こそ息が止まるかと思った。
「……やっぱりやめますか?」
濡れて下りた髪と、貫くような熱視線。
はだけたバスローブから見える、普段のスーツ姿からは想像もできなかった引き締まった肉体。
妖艶な部長に、また目を奪われる。
「やめ……ません」
不思議。
ニコニコ笑っていない真顔の部長は、いつもとは別人のように私を翻弄する。
「んぅ……」
すぐに重なった唇。
音をたてて、何度も深く口づけを交わした。
部長とこんなに、いやらしいキスをするなんて。
キス自体も数年ぶりのことで、頭が真っ白になるような気持ち良さに身体が弛緩する。
気づけば部長の背中に手をまわし、もっと深くと求め始める。
夢中になってキスしているうちに、私達は重ね合ってベッドになだれ落ちた。
「ちょ……待っ……て」
性急に私のバスローブを剥ぎ取り、愛撫を始める部長に身体が強張る。
何もかもが久しぶりすぎて、まだ心も身体も追いつかない。
何より、ほんわか部長とのギャップに頭が混乱している。
私に跨がる彼は、女性のことは知り尽くしているような余裕に満ち溢れていて、手つきはちょっと強引で、どこまでも色っぽい。
「嫌?」
「嫌じゃない……けど」
部長は私の反応を観察するように見下ろし、露わになった胸を執拗に撫でた。
「だったら黙って俺に懐柔されなさい」
「ふわあ!」
思わず変な声が漏れる。
部長、今“俺”って言った!
いつもは“僕”か“私”なのに!
私を見下ろす瞳は、エスな気質がダダ漏れしている。
……ニコニコの、ほんわか部長がぁ!
「ほら。いい子だから、どこが良いのか教えて。今日でさくらの弱いとこ、全部覚えるから」
「部長!?……んあっ」
そこからはもう、快楽の嵐で。
何度も鳴かされ絶頂に導かれ、最後には気絶するように意識を手放した。
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