エピローグだけの物語

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 その人と山に行ったとき、松ぼっくりを拾っていた。 「松ぼっくりなんて拾ってどうするの?」私は訊ねた。純粋な疑問だった。左手に持ったビニール袋にはぎっちりと松ぼっくりが入っていた。 「松ぼっくりは、キャンプの時、火の燃料になるんだよ」  その人が言った。右手に持った私が持っているのより大きなビニール袋には松ぼっくりが半分ほど入っていた。 「何で?」 「知らない。誰かが教えてくれたんだ」 「変なの」 「でも、燃料になるのは本当だよ」 「ふーん」  私は屈んで足元に落ちていた松ぼっくりを拾った。頭の上で木々が葉を揺らした。顔を上げると、その人が笑っていたが、逆光のためよく見えなかった。  
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