第一章

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第一章

「君はだれだい?」 「未知の誰かと出会ったら、そう訊ねたくなるだろ?」 「そうなのかい?」 「そうさ、まあ僕はね。だから君にもそうしたんだ。」 「なるほどね」 「まあ、いきなり、君は誰だいなんて、強引だとは思うけどね。」 「なるほど、人間は昔から、人間らしさという羊の皮を被った、オオカミ同士の不確実で確定的な合意の上にあるという幻覚を、無自覚に信仰しているのか…」 「………僕は盲目ってことか?」 「さあね。何が盲目かなんて、僕らの種族でさえ認識できないよ。完全なんてないから、当たり前か…。」 「そう言うもんなのかね。」 「まあ、君が何でこの場所に来たのかを聞きたいな、あのオンボロ船でもってね。」 「オーリー…。そういえば、何で人間の言葉が分かるんだ?」 「ずっと見てきたからね、君たちのことを…。まあ、僕のことは置いといて、君のことを話してくれよ、サルバドール…。」 「僕のことか…」  ある午後の黄金の暖かさを思い描いて欲しい。僕はそんな夢を見ていて、僕を呼ぶ声がしたんだ。起きろサルバドールってね。暫くして、僕は立ち上がり、他のクルーを探した。5分ほど船内を徘徊したが、誰もいなかった。脱出用のカプセルは、全て空だった。他のクルーは、今頃宇宙の何処かを彷徨っているか、それとも何処かの惑星で生きているのか、何一つ見当が付かない。このケプラーに来てから、今日で2週間が経つ。地球時間ではね。ピーター・カバットジンというクルーがいたんだ。そいつとは、僕が火星軍に配属されてから、仲良くしていた。そのピーターがよく言っていたことを、ふと、思い出したんだ。自由なんて心でしか定義出来ないんだ。生きることに沿う、そう思っておいた方が、人間ってのは、生きやすくなるんじゃないかってね。彼とは今回の出来事でも一緒だった。彼は今、どこを彷徨っているんだろうか?そうそう、オーリー住んでいる、あのオンボロ船も僕と同じ状況だろ? 「まあ、随分長いことね…。」 それで、ひとつ分かった事があるんだ。まあ、これについては、後で話すことにするよ。先ずは、僕がなぜこのような運命を辿らなければならなかったのかを話そう。  
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