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ショートショートパート「オクトパスガーデン」
おやすみ、サルバドール、もう泣かないくても良いんだよ。瞳には黄金のまどろみがあふれている。私はほっとするの。
本を読んでいるとき、かりに両親が本に描かれた土地に出かけてもいいと言ってくれたら、僕は真実の探求にむけて計りしれない一歩を踏み出すような気がしただろう。というのも人は、つねに自らが自分の心の虜であると感じてはいるが、じっと牢獄につながれているわけではないからだ。むしろ心とともに心を越え、外界に達すべく懸命に不断の跳躍を試みているものの、いつも自分のまわりに外界の音ではなく内心の震えの余波にほかならない同一の音を聞きつけ、いわば意気消沈しているのである。心が投げかけた光ゆえに貴重なものとなった存在があり、人はその光を存在のなかに再発見しようとするが、その存在には、心のなかである種の想念と隣り合っていたときに備えていた魅力が現実の世界では味気なく思えて、がっかりする。ときには、心のあらゆる力を巧みで華麗なものに変えて、われわれの外にあってとうてい到達できないと感じられる人びとに働きかけようとする。それゆえ僕がいつも愛する人のまわりに、そのときいちばん出かけたいと願った場所を想いえがき、できればその人にそこを案内してもらい。そして、未知の世界の扉を開いてもらいたい。そう願ったとしても、それは単なる連想という偶然の結果ではない。旅行や恋愛にまつわる僕の夢というのは、私の生命のありとあらゆる力がひとつの同じたわむことのない力となってほとばしり出る、さまざまな瞬間にほかならないからである。その瞬間を今の僕は人工的に区別しているが、そのやり口は、じっと動かないように見えるというので虹色の噴水をさまざまな高さで切り分けるにも等しい所業なのである。
君がその身を隠していた重い石は、君の肩から下ろされていく。雲が流れ、雨が止み、風が立った。
空っぽな時間は、音を立てて崩れていく。ほら、君にも聞こえるかもね。
聞こえないなら、もう少し待ってみようか。私はそろそろ行かないければならない。起きて、サルバドール、もう時間よ…。
Je dédie ce travail aux personnalités littéraires que j'admire.
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