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「唯子、別の場所で休憩しよう」
「えー? 私まだ鞠ちゃんと話したい……って邪魔しちゃ悪いか」
「そうだよ」
「じゃあ鞠ちゃんまたね!」
そう言って手を振った唯子は、先に立ち去ろうとしていた北斗の後ろを追いかける。
嵐のように二人が去った後、再び図書室が静寂に包まれた。
いつの間にか体育館での軽音部の演奏も聞こえなくなっていて。
甘い時間を乱された新は、窓に顔を向けてゆっくり息を吐いた。
それでも突然だった北斗の変わりように、鞠は少し戸惑っていたから。
何か事情を知っているかもしれないという望みをかけ、新に問いかける。
「昨日、北斗とどんなこと話したの?」
「うーん、なんだったか忘れた」
「ええー、絶対嘘だよ教えてよー」
本当は知っているのに、あえてとぼけることを選んだ新。
それに対して眉根を寄せ頬を膨らませた鞠だったが。
北斗の好感度を上げるわけにはいかない新が、その丸い頬に手のひらを添えて。
「まあいいじゃん。それよりその顔も可愛い」
「ご、誤魔化してもダ」
「もっと近くで見せてよ」
「っ……あ、らたく……」
妖しく微笑む新は鞠の返事を待たずに、もう一度その唇を重ねて熱を集めた。
翻弄されている自覚はもちろんある。
けれど、この熱をずっと待ち望んでいた鞠は。
好きな人とのキスがこんなに心地良いものなんだということを、教えてくれたのが新で本当に良かったと思った。
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