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「ねえ新くん、今日はどこ行こっか?」
「……鞠はどこ行きたい?」
「ん〜、まずはランチして。二人で楽しめる涼しいところがいいな」
「うん。俺もそれに賛成」
そう言って駅方面に向かって歩く新だが、まだ行き先の答えは出せていない。
隣の鞠が「どこに向かってるの?」と尋ねると、信号で止まった新が口角を上げて言う。
「俺の家」
「え⁉︎」
「簡単に昼飯作るし、対戦ゲームもあるし冷房効いてるし」
「ちょちょ」
「ここから近いマンションで、親もいないし姉ちゃんもまだ店だから」
「ちょっと待って!」
「ん?」
歩行者信号が青になって人々が歩き出す中、鞠と新だけが手を繋いだまま停止している。
ジリジリと日差しが降り注ぐ中、頬を染める鞠は決して日焼けしたのではなく。
家族が不在の新の自宅に、二人きりになるという緊張感に襲われていたから。
「家は、流石にまずいんじゃ……」
「なんで?」
「おうちの人いないんでしょ?」
「いた方が良かった?」
「いや、うーん……」
鞠の複雑な思いが、どうやら新には伝わっていなくてもどかしい。
確かに、家族がいるなら挨拶は必須。でもそれはそれで緊張するし。
かといって家族が不在なら、違う不安も抱いてしまう。
決して嫌というわけではないけれど、心の準備というものがまだできていなかったから。
鞠が言葉を詰まらせていると、青の歩行者信号が点滅を始めて、再び赤へと切り替わる。
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