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「鞠! おはよー」
「え! お、はよう……」
学校に到着して間も無く、下駄箱前で靴を脱いだ鞠を呼び止めたのは。
部活の朝練を終えたばかりの北斗だった。
早速見つかってしまったというだけでなく、北斗が朝練だったのならばわざわざ電車を早める必要もなかったのに。
無駄骨だった事も含めて、二重のストレスが鞠にかかってきた。
「そういや昨日の放課後、俺のこと探してた?」
「え……」
「キャプテンから聞いたんだけど」
「あ、あーそうなの! 北斗真面目に部活してるかなーって思って監視に」
すっかり忘れていた。
昨日の放課後、北斗を探して体育館に行った事実を秘密に出来ないことはわかっていたはず。
なぜなら鞠は体育館に向かっただけでなく、先輩部員と会話をしていたから。
となるともう一つ、北斗にとっては気掛かりな事を尋ねられる予感がして鞠が身構える。
「え、もしや部室きた?」
「……い、いや? 部室知らないから諦めて帰ったよ」
「そ、そっか!」
明らかにホッとしている北斗を見て、やっぱり彼女ができたんだなと悟った。
幼馴染とは言え、全てを話さなくてはいけないわけではないが。
そう秘密にされると寂しくなるのは、ただの友人としても正常な気がした。
まあ、私も北斗が好きな事隠してきたけど……とお互い様であることを思い出して、鞠が項垂れていると。
突然、鞠の腕が掴まれて引き寄せられた先にいたのは、
昨日のこの同じ場所で気まずい別れ方をした、新だった。
「……え⁉︎」
「おはよ、ちょっときて」
「ちょ、わ!」
そう言って鞠の了承も受けずにグイグイ引っ張っていく新は、北斗の存在には目もくれずその場を立ち去った。
そのまま階段を上り続け、人気のない屋上手前の踊り場までやってくると、ようやく足を止めた。
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