01. 落とし物は波乱の幕開け

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 強引にここまで連れてこられた鞠は、その間無言を貫いていた新に不安を覚えていた。  昨日の態度に対するお叱りか。  はたまた不細工な泣き顔への嫌味な感想でも述べられるのかと、心を震わせていた時。 「これ、三石さんのでしょ」 「あ、メモ帳……?」 「昨日拾い忘れていたよ」  差し出された目の前の花柄のメモ帳は紛れもなく鞠の物で。  ただこれを渡すためだけに声をかけられたんだとわかり、ホッとした。  静かにメモ帳を受け取って、すっかり安堵の表情を浮かべる鞠だったが。  大事なことに気がついた途端、一気に青ざめていく。 「ん? えと、あれ?」 「何?」 「一条くん、このメモ帳の中身って、見……見た?」  確か昨日の昼休みに、北斗への告白方法をメモ帳に書き出した。  その部分を捨てた記憶のない鞠は、まだこの中に記されていると確信していて。  恐る恐る新の顔に視線を向ける。  どうか「見ていない」と言って動いてほしかった、その口元は。 「“電話、メール……”」 「えっ」 「“好きな人とのファーストキスを実現させる”」 「っっ⁉︎」 「三石さんって、キス未経験なんだ?」 「〜〜!」  無表情で淡々と話す新の言葉に顔を真っ赤にした鞠は。  そんなこと書いたっけ?とメモ帳のページを乱暴にめくっていく。  すると、告白方法を書き出した最後に強調するように『願望』がメモ書きされていて。  そのあまりに恥ずかしい一文を書いた昨日の自分を恨んだ。
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