大穴の謎

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 翌日、ジェームズは定時に起床した。しっかりとテールコートに着替え、ケルナー様の朝食の給仕をする。  食堂には温かなポタージュスープにふわりと焼けたパンの香りが漂う。 「ところで」  ケルナー様がジェームズを見た。普通、主人の方から使用人に声をかけることはご法度だ。ジェームズは思わずびくりと背筋を伸ばした。 「何か不手際がございましたでしょうか」 「いや、そんなことはない」  ケルナー様が新聞を広げる。 「旅先でヘンリー協会がオーストラリアでオパールの鉱山に出資しないかという話が出た。この屋敷でも若いのが数人、オパール掘りに行ったらしい。退職願いさえ出さなければ咎めるつもりはないがな」  ケルナー様は紅茶を一口飲んだ。 「わしはこれに出資すべきだろうか。屋敷が傾くほどではないが、一口1000ポンドとは大金だ。君の忌憚のない意見を聞きたい」 「確実に詐欺です」  ジェームズは即答した。 「オーストラリア産の土からオパールが沢山産出するならば、わざわざ穴など掘らずに土をそのまま山にすればいい。わざわざ穴を掘って、埋める必要はありません。おそらく、偽のオーストラリア産の土で埋めたのでしょう。。それにつられた下層民や投資家を、夢をつかむために偽のオパール掘りに参加させようという魂胆だと思います」 「む、そ、そうか。では出資は止めにしよう」  ケルナー様が厳しい表情をして、紅茶を飲み干した。  『決まった』  とジェームズは思った。ホームズばりの推理で、館の危機を救った。
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