郊外の大穴

2/2
前へ
/13ページ
次へ
 さて、これは一体どういうことか。  パイをかじりながらの帰り道、ジェームズは馬上で思案にふけった。  ホームズの傑作、『赤髪連盟』を想起する。  あの話は、銀行に忍び込むための地下通路を建設するというものだ。  しかしここ、ハムステッドでは、確かに富豪は存在するが、富が一か所に集中している訳ではない。  主人や婦人の寝室になら宝石などがあるだろう。しかし銀器は家政婦が管理している。宝は分散しているのだ。    ハムステッドの郊外に穴を掘っていることも気になる。屋敷に侵入する目的ならば近いほうがいい。それなのに多大な労力をかけて郊外からトンネルを掘り進めるのはコストがかかりすぎるのではないだろうか。  強盗、とまではいかなくとも、メイドの一人や二人を買収して屋敷に窃盗に入る方がよほど簡単だろう。  謎は深まるばかりだった。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加