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大穴の行方
休憩時間が終わり、ジェームズは思い出から現実に立ち返った。今日はごケルナー様が旅行のため、使用人たちはめいめい、そこそこの仕事で落ち着いている。
家政婦がたるんでいると檄を飛ばすが、主人不在の館では使用人たちの中で懸命に職務を全うする人は少ない。
日が沈み、館はランプの明かりにほのかに照らされる。
ジェームズとバリーは同室だ。
使用人にとって、二人部屋は破格の待遇だ。この恩恵を受けられるのはフットマン以外には侍女しかいない。家政婦、コックは別格で一人部屋が与えられるが、他の使用人は数人がぎっしりと詰められる大部屋で寝る。
「そういや、俺、今日例の大穴が埋められているって庭師から聞いたぜ」
バリーが不思議そうな顔をしてつぶやいた。
「埋める? 何で?」
「俺に聞かれてもなあ」
バリーが苦笑する。そりゃあ、分からないのも当然か。
「どこかから大量に土砂を詰め込んだって聞いたぜ」
わざわざ大穴を掘る。
地質の異なる土砂を入れる。
何の意味があるのだろうとジェームズは思案した。
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