もしも

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僕が自分の部屋の前まで行くと、小さな箱が置いてありました。 何でしょう? 不思議に思いながらも、その場で箱を開けてみると、保冷剤とラップをかけられた器、後、1枚の紙が入っていました。 紙には。 『お仕事お疲れ様。余計なお世話かも知れないけど、肉じゃがが余ったから、良かったら食べてくれ。安倍圭介』 とだけ明記されていました。 丁度、明日は仕事が休みの日なので、朝食で頂いてそれからお礼も兼ねて器を洗って返そうと思った僕は箱を閉めて部屋の鍵を出しました。 当然、部屋の中は真っ暗です。 僕は、電気を点けると、肉じゃがを冷蔵庫に入れて、カーテンを閉めようと窓際に行きました。 7階から見える、この夜景を僕は密かに楽しみにしています。 今夜も星が凄く綺麗です。 いつもなら、もうしばらく眺めているところなのですが、今日はこれから遥さんに連絡しなければなりません。 僕はコートだけ脱ぐと、リビングのソファーに座って鞄から婚姻届を取り出しました。 本当に困った法律を政治家さん達も作ったものです。 僕は大きくため息をつくと、携帯電話を取り出して、遥さんの携帯に電話を掛けました。 出て下さるか解りませんでしたが、数回のコール音の後に鈴を転がすような可愛らしい声が聞こえてきました。
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