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「あの、法律で30歳以上の独身男女には強制的に人生の伴侶が与えられるというのは無いですよね…?」
僕の確認に、山村先輩はポカンとして、千夜くんと茜さんには突っ込まれました。
「はあ?そんな横暴な法律があるかよ」
「結婚は好きになった人達同士でするものでしょ?」
「そうですよね…千夜くん、帰りましょう」
「鈴木?」
千夜くんが僕の異変に気付いた様ですが、僕はそれ以上は何も言わずに会計を済ませて外に出ます。
「「ありがとうございました!」」
山村先輩ご夫妻の声に見送られて、僕は車で千夜くんを家(お店)へと送って行きます。
助手席から千夜くんが言いました。
「鈴木、何かあったのか?顔色が冴えねーぜ」
「山村亭で眠ってしまう程です。手術続きで疲れているだけですよ」
「そうか?…何が有ったかは知らねーが、余り思い詰めるなよ」
「ありがとうございます」
千夜くんは、それ以上は何も詮索せずに、モサコの前で車を降りました。
僕は1人になって、車をマンションに向かわせてから、先程まで見ていた夢を忘れる事は生涯ないだろうと思っていました。
それだけ遥さんという女性は僕の中で大きくなっていました。
例え夢の中だけの存在であったとしても。
『鈴木さん…』
『新婚旅行はフランスが良いなぁ』
『ありがとう…ございます…』
耳を澄ませばそんな遥さんの声が次々に聞こえてきそうな気がしました。
完
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