もしも

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僕も薄々そう思っていました。 僕も結婚は出来ればしたく有りません。 医師という仕事が好きな僕は、夫婦生活を営んでいく上で、仕事の足枷の様になるのではないかという懸念がありました。 それに僕の専攻は心臓外科で有るのは先に述べた通りです。 ですが、それだと患者さんの容態が急変したら、休日でも夜中でも病院に行かなければならないのです。 妻となる女性が、何らかの理由でもしも夫である僕に傍に居て欲しいと思っている時でも、それすら出来ない可能性が高いのです。 「遥さんも結婚したくないなら…でも、駄目ですよね。法律で決められたことなのですから…」 「ハルカちゃんっていうんだ?他に好きな人がいるのかなぁ…」 「だとしても、独身って事は片想いか、何か他に理由があんのか。…鈴木、その遥って女と1度よく話し合ってみろ」 「はい…千夜くん」 「何だよ?」 「何て話し掛けたらいいですか?」 「鈴木…あのなあ、もう高校生じゃないんだ。それくらい頭の良いあんたが悩んでいてどうすんだ?」 「鈴木さんの今の気持ちを正直に話してみたら?」 「鈴木くん、お見合い結婚している人達だって、僕と茜ちゃんだって、最初は結婚生活に不安を持っていたよう」 「山村や茜の言うとおりだ。一歩踏み出してみないと世界は変わらないままだぜ」
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