もしも

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もしも

結婚が法律で義務化されたのは、パラサイトが治ってメディアが騒がなくなった頃のことでした。 30歳になっても独身でいる男女には、強制的に伴侶が与えられます。 僕…鈴木航(すずき わたる)も、御多分に洩れず その中の1人でした。 その日…1月8日月曜日は成人の日で祝日でしたが、医師である僕は、仕事で病院に来ていました。 僕の専門分野は心臓外科です。 手術を成功させて、手術室から出てきたところで外科部長に呼び止められました。 「鈴木くん、ちょっと良いかね?」 「はい、どういったご用件でしょうか?」 「部屋に入ったらわかるよ。ついてきたまえ」 そう言うと部長は自室に向かって歩き始めました。 僕は、テレビで法律の改正を観ていたので、大方、遂に僕にも人生の伴侶が与えられるのかと、少し憂鬱になりました。 僕の親友の千夜保(せんや たもつ)くんの奥さん千夜香澄(せんや かすみ)さんのお腹の中には、既に赤ん坊がいます。 高校時代の先輩、山村凌(やまむら りょう)さんも、お子さんこそはいらっしゃいませんが、茜(あかね)さんという奥さんがいます。 お2方とも、恋愛をした上での結婚でした。 僕は結婚よりも仕事をしていたいのですが、法律に反したら警察に捕まってしまうでしょう。
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