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コンビニの明かりの下、おにぎりコーナーに並ぶ鮭握りに苦笑いした。
『洋ちゃんの気持ちがうれしいから、好きってことにした』
美希の日記の続きには、そう書いてあった。あれから、涙が干からびる覚悟で最後まで読んだ。僕の知らない、弱い美希がいた。なのに、最期が近づくにつれて、文字は僕の名前ばかり連なる。
独りになる僕を案じる文面ばかり。
『洋ちゃんは一人じゃダメだから、神様に新しいパートナーをもらえるようにお願いする』
「余計なお世話だよ」
僕は笑って、身を翻した。もう2年以上独りで頑張ってる。
「アメリカンドッグひとつ」
「ケチャップはお付けしますか?」
「はい。マスタードとくっ付いてるの、ください」
今更だけど、君の好きを僕の好きってことにしたい。
コンビニを出て、美希がやってたみたいに、「アーッ!」と言いながらアメリカンドッグの丸い頭に大口でかぶりついた。美希と同じように鼻先にケチャップが付いてしまう。
ポケットのスマホがバイブする。まだ息子のままの僕に、義理の母親からのメッセージが来ていた。どこか補修するところがないか、さっき尋ねた。玄関のドアクローザが壊れているとのことだった。
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