妻の嘘

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 窓を開け、冷たい風で換気した後、ようやく猫におやつを差し出す。夢中でパッケージの先を舐める様子を眺めていた。骨ばかりでガリガリだった体。ずいぶん太ってきたな。  目線を上げたローテーブルに飾った、なんでもない時の僕らの写真。  もう少し、夫婦でいよう。僕の気が済むまで。君の記憶が薄らぐまで。何十回も季節が巡るまで。 〈おわり〉  
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