妻の嘘

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 妻がいなくなってから、もうすぐ2年になる。亡くして一ヶ月後、5年間住んだ団地から2DKのアパートに引っ越した。今思えば急ぎすぎたような気もする。いや、でも浸るには深すぎた。気持ちはシーソーのよう。  手元に残したのは、薬指の指輪だけ。そもそも彼女は持ち物が少なかった。ダイヤモンドの小さな粒をしょっちゅう日にかざしてキラキラ光らせては、いい指輪を買ったと笑っていた。彼女の私物の中で、多分一番高価なものだった。  棚のおにぎりに手を伸ばす。妻は鮭が好きだった。  どこに行っても何をしても、まだ美希の記憶が僕の脳内で生き生きと再生される。  考えないようにしても、考えなくなると裏切るようで、僕は困惑しながら毎日を送っていた。
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