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その日の夜、諒子からメッセージがきた。共通の友達に、通信アプリのアカウントを教えていいか尋ねる内容だった。
スタンプだけで了承すると、壁に掛けているエレキギターを手に取った。友達の音楽会で伴奏を頼まれている。やりたい訳じゃなかったけど、困っていたし、断る理由もなかった。
ピアノを弾く、妻になる前の彼女と、そんな場で知り合った。上手なのに緊張してヘマをするタイプだった。
この、無駄にヘビーメタルなテイストのギターも、それ以来、穏やかな曲ばかり奏でて、ずいぶん辟易していることだろう。
指で弦を弾く。アンプに繋げなければ大した音量にならないから、壁が薄いこのアパートでも迷惑にならないだろう。ぺけぺけと薄い音を鳴らしていると、スマホが通知音を鳴らした。
手に取って見ると、さっき諒子を通して繋がった女友達から早速の連絡だった。
『タイに行ってきたお土産あるんだけど、いつ家にいる?』
男みたいな文面だ。思わず噴いてしまった。相変わらず直球。でもそれがナナミらしかった。
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