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「これ、パッタイって食べ物のソース」
ナナミがくれた瓶を手に取り、思わず言った。
「業務用スーパーに売ってあるやつだね」
「うっそ」
「食べたことあるよ。辛くて旨いよね」
ショックを隠しもせず、ナナミは口を開けたまま固まった。瓶、お土産の重量をかなり取っただろうな。
土曜の昼。諒子とナナミは一緒に遊びにきた。結婚してから作れるようになったパスタを振る舞った後、二人が持ってきたケーキでお腹が満たされていた。
ナナミはひと月ほど仕事でタイに行っていたそうだ。しっかり日に焼けて歯が余計に白く見える。
「コヤマンはあんまり珍しいもの食べなさそうと思ってたけど」
「美希ちゃんが買ってきたんでしょ」
諒子も妻と仲良くしていた。笑う口元に少し寂しさが滲んでいる。
「もう2年か。早いね」
ナナミが呟いたところで着信音が鳴った。諒子のスマホだった。「もしもし」と応答しながら席を外す。話し方から仕事の関係かもしれない。
「コヤマンは独りじゃない方が幸せなタイプだと思うんだよね」
諒子の話し声をBGMに、ナナミが言った。唐突な話に、気の利いた返事もできなかった。そんな僕を気にするでもなく、ナナミは続ける。
「実は友達が結婚願望あってさ。良かったら紹介したいと思ってるんだけど。すごくいい子だよ」
「ええ〜」
「一回会ってみない?」
もうすぐ諒子の電話が終わりそう。「今度返事する」と慌ただしく切り上げた。
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