妻の嘘

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 通話ボタンを切ってから、大きく上下する心臓を落ち着けようと一旦水を飲んだ。 『あの子がインターネットで日記を書いてたのを思い出して。でも秘密のアカウント?っていうのが分からなくてね』  義母(おかあさん)は一度何かの拍子でそれを見てしまったらしく、それが原因でケンカしたことがあるらしい。以来、そのことを話題に持ち出すこともなかったそうだ。  アカウントだから、多分美希の使っていたメールアドレスとパスワード。  銀行も何もかも同じだから変えるように言っていたのに。 『もしかして、ーーーじゃないですか?』  数分後、『開いた!』と嬉しそうな声。心臓が激しく胸を打つのを感じた。 『急に思い出しちゃって。......もう見てもいいよね』  僕に許可を得なくても。出かかったその言葉を飲み込んだ。 『いいと思いますよ』  誰でも、少し後ろめたい時には同意が欲しくなるものだ。 『良かったら僕にも、どこで読めるか教えてもらえませんか』  教えてもらったサイトの、美希の登録名。唾をなんとか飲み込んで、ページを開いた。20××年。まだ僕と出会っていない日々から始まっていた。
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