羊彩娟

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 じっとりとした目つきで睨まれた明鳳は顔をさあっと青くさせた。 「修理すればいいんだろう!!」 「そういう問題ではありません」 「だいたい、ここがボロすぎるのが問題なんだ!!」  自分の非なのに建物のせいだと明鳳が喚くので玉鈴はわざと大きくため息をはいた。 「いい加減にしてくれませんか?」 「……お、俺は悪くないぞ」 「ならば誰が悪いのですか?」  消え入りそうな声で明鳳は「……建物」と答えた。 「貴方が来てからほぼ毎日、何かしら壊れている気がするのですが?」  棘のある言い方だ。  しかし、それは真実であるため明鳳は反論せずに押し黙る。実際に自分が壊した物は花瓶や帳、細々とした物を含めれば多岐にわたった。  明鳳が無言を貫くので玉鈴は問い詰めるのを止め、扉を持ち上げてどうするか迷っていた尭の名を呼んだ。 「それは邪魔にならないところに移動してください」 「分かりました」  流石の尭でも扉を一人で運ぶのは大変だろう。玉鈴は腰をあげようかと考えたが、軽々と扉を運ぶのを見て手伝うのを止めた。幼少期に去勢された玉鈴と違い、成人してから去勢を施した尭は宦官だが肩幅は広く、筋力もある。非力な自分が手伝うと申し出ても断られることは今までの経験から分かっていた。  扉が壁に立てかけられたのを見届けてから玉鈴は明鳳に視線を移した。 「の修繕はもちろん亜王様がしてくださいますよね?」  有無を言わせない言葉には重みがあった。明鳳は生唾を飲み込む。 「もちろんだ」 「ならいいです」  言質(げんち)をとり満足したのか玉鈴は柔らかい表情を浮かべ、未だ入り口で立ち尽くす明鳳を手招きする。 「いつまで立っていないでこちらに座ってはどうですか?」  促されるままに明鳳は腰を下ろした。 「——で、何があった?」
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