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桐箱を開けるとなかには大粒の青玉が輝く耳飾りが納められていた。
玉鈴は耳飾りを摘み上げた。不純物も少なく、鮮やかな色は青玉のなかでも特に希少価値が高そうだ。
目を凝らしてみるが耳飾りにはなんの呪詛も込められていない。彩娟がいう通り、本心からのお詫びなのだろう。
「よかったのですか?」
耳飾りを眺めていると尭が声をかけてきた。
「ええ。彼女も無駄な嫉妬をしなくて済みます。これで一安心ですね」
耳飾りを桐箱にしまい微笑む玉鈴とは反対に尭はやや納得いかない様子を見せる。
「自分は流石に今回の件は罰を受けさせた方がいいと思います」
ここまで頑ななのもまた珍しい、と思いながら玉鈴は「いいんですよ。対象は僕ですから」と首を左右にふった。
対象が他の妃嬪や宦官なら流石の玉鈴も見て見ぬふりはしない。見つけ出し、それ相応の罰は受けさせる。
「もっと御身を大切にしてください」
「していますよ」
尭は険しい表情を浮かべる。
「していないから言っているのです」
ため息混じりに呟かれた言葉に、玉鈴は苦笑を返した。
「貴方達が思っている以上、僕は丈夫です」
丈夫という単語に尭は「どこが」と顔を顰めた。
「貴方は本当に顔にでますね」
「そうですか」
「ええ、そうですよ」
書簡と桐箱を大事に抱え込むと玉鈴は保管室へ置きに行こうと立ち上がった。
ゆっくりとした歩みで回廊を歩いている時、背後から聞こえる慌ただしい足音に玉鈴と尭は顔を見合わせる。
「またサボりですか?」
「サボりとはなんだ! 休憩だ!」
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