449人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
明鳳の登場に玉鈴と尭は「またか」という顔をした。どうせすぐ、義遜によって連れ戻されるのによく諦めないものだ。
明鳳は二人の元にくると玉鈴が手にもつ書簡と桐箱を見て不思議そうに目をくるりとさせた。
「これは?」
「羊淑妃様から書簡をいただきました」
ぴくり、と明鳳の眉がはねた。
「犯人が分かったのか」
「いいえ、分からなかったようですよ」
書簡を持ち上げ、玉鈴は困ったように笑った。
「ただ、もうこのような騒動は起こさないと反省しているみたいです」
「……そうか」
犯人を捕まえると言って息巻いていた分、明鳳は拍子抜けした様子をみせた。見るからに肩を落とす。
「ええ。これで一件落着ですね」
「お前がいいならもう何もいうまい」
「ならこれで解決です」
明鳳と尭は、はあ、と大きなため息を吐いた。お互い、顔を見合わせると無言で頷き合う。
「お前も苦労をしているのだな」
「まあ、……はい」
「今度、美味いものでも持ってきてやろう」
「楽しみにしています」
この騒動である種の友情が芽生えたのか意気投合する二人を尻目に、今度は玉鈴が目をくるりとさせた。
けれど、何も言わない。大切な部下に友人ができるのはいいことだ。例え相手が我が儘で傍若無人でも。
「俺は庭園の四阿にいるから何かあったら呼べ」
「ごゆるりとお過ごし下さい」
「そうするさ」
勝手知ったるなんとやら。明鳳は庭園へと向かって歩き出した。その小さな背が見えなくなると玉鈴と尭はまた回廊を歩き出す。
蒼鳴宮で起こった動物遺棄事件はこうして幕が下りた。
最初のコメントを投稿しよう!