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「何故、柳貴妃は俺の元に来ない?!」
李明鳳は鼻息荒く捲し立てた。しかし、怒鳴るだけでは身のうちを燻る怒りを抑えることはできず、勢いに任せて卓を埋める書類を腕で払う。
はらはらと宙を舞う紙は雪のように空から舞い振り、床で跪く貴閃の肩や頭を撫でて床に落ち、カサリと小さく音を立てた。
貴閃はそれを咎める事はせず、焦りに満ちた表情で床に広がる長袍をただ一心に見つめていた。黄色を基調とした極彩色の長袍には尾をくねらせ天の昇る龍と瑞雲の刺繍。それはこの国の王しか身に纏うことが許されない、明鳳がこの亜国の王という証だ。
明鳳の不興を買わず、そして彼が納得する言葉を思案しながら口を開く。
「明鳳様のお言葉も最もでございます。ですが、あのお方は特別な存在。きっと考えがあるのでしょう。龍の半身である方に乱暴はおやめくださいますよう申し上げます」
そんな言葉、この年若い亜王にとってどうでもいい事は理解している。しかし、この言葉以外かける言葉が思い浮かばず、貴閃は再び床に額を擦り付けた。
貴閃の考え通り、明鳳は納得がいかないようだ。舌を打つ音とともに、
「俺に指図をするな!!」
怒りに満ちた声が外廷を揺らす。明鳳は眉を逆立てると拳を卓を叩きつけた。
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