周美人

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 仲が良くても後宮内での立場が上の翠嵐には強く出れないらしく、不服そうではあるが琳は首を縦に振った。 「周美人様、気にしてませんから大丈夫ですよ。あまり外を出歩かない私は後宮では珍獣の様に思われている見たいですし」 「珍獣?! 妃に向かっての言葉ではありませんわ! それは怒った方がいいです!」  ——間違えた。  余計な一言を付け加えてしまった事に内心後悔した。流石に珍獣とは自分で言っても酷いと思う。 「いえ、直接言われたわけではありませんから」 「そういう視線って事ですよね?」  玉鈴はううんと唸った。  短時間の触れ合いだが琳ははっきりと物を言う、口が上手い女人だと理解した。大方の事には寛容な玉鈴でさえ、彼女の勢いには押し負けてしまいそうになる。これは明鳳とは馬が合わないわけだ。 「すぐに処罰を与えるべきですわ。国の象徴である貴女様を侮辱したことを償わせるべきです」 「そこまでする必要はありません。元はといえば私が表にでないのが原因ですから」  どうにかして琳を落ち着かせようと試行するが、 「宮女なんか甘やかす必要はありませんわ。甘やかすと図々しくなります。それに宮女が妃を愚かに卑下するなどあってはいけないことですもの」  琳は目つきを鋭くさせて激昂する。  何を言っても逆効果だ、と困り果てた玉鈴は困惑した表情で口を噤む。玉鈴が黙ったことで琳の怒りの矛先は宮女へと向く。 「貴女」 「は、はいっ!」 「柳貴妃様を侮辱した者の名を今すぐ言いなさい。そうすれば貴女の処罰はかる——」  琳の袖を翠嵐が困り顔で引っ張った。 「琳様、そのために彼女を呼んだわけではありませんよ。それに、あまり責めてはいけません」 「翠嵐様。そう、ですね。——柳貴妃様、貴女様の御前で無礼な振る舞いをいたしました。申し訳ございません」  まだ怒りが下がっていないのか頬を桃色に染め、琳は流れる動作で拱手をした。 「いかなる処罰でもお受けします」 「お顔をあげてください。私に頭を下げる必要はありません」 「はい」  琳は静かな動作で面をあげた。まだきちんと納得してはいないようだが翠嵐と玉鈴に諌められたのが応えたのか琳は口を閉ざす。
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