終章

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「おかしなことを言いますね。斉景長公主様は死によって罪を償いましたよ」  多くの犠牲者を出した斉景長公主は最も重いとされる獣刑に処された。獣刑とは文字通り、獣によって生きたまま食い殺される刑罰だ。死後、肉体が細々になることは魂が定着せず、復活ができないということ。瑞国では斬首刑、火刑と並ぶ極刑とされる。  また、共犯とされる乾皇后は亡骸を火葬し、肉体を灰にすることとなった。残された乾一族は九族皆殺しの命が下され、十六歳以上の男子及び女子は斬首刑に、十五歳以下の男子は宮刑に、女子は一生を奴婢の身分に落とされることとなった。  高淑儀に関しては共犯であることは公表しないことになった。彼女の父と姉の立場を守るためだ。 「私を生かしておいたこと、君は絶対に後悔することになる」 「あら、私の心配よりもこれからの行く末を心配したらどうです? 董家に成り変わり、鴆と暮らすことは死よりも辛い人生になります。死んでしまった方が良かった、と後悔しますよ?」  柳月は、はっと鼻で笑いながら木槿の嘴をつつく。 「本望さ。元より、あの人と人生を歩むつもりで生きていたのだから」 「これからやる事はたくさんあります。柳月お姉様にも手伝って貰わないと」  やめてくれ、と柳月は口を曲げる。 「お姉様呼びは小っ恥ずかしい」 「あら、私のお姉様になったのに?」 「それでもだ。この名前は好かないが、呼び捨てで頼むよ」 「せっかく、お二人がつけてくださったのに」 「君がつけたのなら喜んで名乗ったさ。あの二人だから嫌なんだ」 「そんなことを言って、来月どうするつもりです?」  一カ月後、皇太后主催の茶会が禁園にて開かれる。名目上は雪家との親交を深めるため、本当の目的はただの世間話をするために。春瑛はもちろんのこと、柳月も招待されている。 「そんなもの、不参加に決まっている」 「喜ぶと思うのに」 「忘れたのかい? 私は皇太后に毒を盛り、瑞王を殺そうとしたんだぞ」 「けれど、皇太后様は生きています」
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