雪玲の野望

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「——さて、お薬も無事に飲めましたし、今夜はお休みください」  空になった茶器を手にした雪玲は満足そうに笑いながら褥に横になった男を見下ろした。男の日に焼けた顔は白を通り越して蒼白だ。本人は我慢していたが薬湯が不味すぎたらしい。 「吐いたらもう一杯飲んで下さいね」という雪玲の言葉に、不自由な唇を固く閉ざし、懸命に吐き気を抑え込んでいた。 「では、私達はお(いとま)させていただきます。何かありましたら横にある喚鐘(かんしょう)を鳴らしてくださいね」  若干、涙目になった男が一度瞬きして了承の意を伝える。  雪玲は香蘭と共に拝礼を捧げると室を後にした。
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