序章

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 董沈の亡骸はそれから一週間、広場で晒され続け、最後には野山へ打ち捨てられることとなった。  当主を失った董家は土地と財を全て国に徴収され、その血を一滴でも汲みする者は全て梟首(きょうしゅ)刑に処されることとなり、その亡骸は董沈と同じく野山に捨てられた。  没落したかつての名家に、人々は面白おかしく噂話を語り合った。特に人々が興味を示したのは董沈の死に際に吐き出された呪詛だ。 「董沈の愛娘である雪玲がいずれ瑞国を滅ぼすだろう」  その噂は刑の執行を見守った者達の口伝で、親から子に、旅人から旅人へと広がり、八年の歳月が過ぎた頃には瑞国及び、周辺の国々には“雪玲”という名は復讐を企てる者——稀代の悪女の代名詞的として広まることとなった。
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