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御礼を伝えに参りました。(視点:咲)
ええと、と取り敢えず口を開く。葵さんは薄い笑みを浮かべている。恭子さんは溜め息を吐き座り直した。
「私が今日も葵さんのお家へ来た理由ですよね」
「そ。旅行の準備については現状、やることも大して無いから手伝いも要らんって電話で伝えたよな」
はい、と頷く。一時間前、旅程表を受け取ってすぐ、徹君に事情を話した。彼は優しく頷いてくれた。そして今度は葵さんへ連絡をした。お手伝いも含めて今日伺いますと伝えると、やることは無いけど来たけりゃ好きにして構わないと受け入れてくれた。だから私は一人で此処を訪れた。
「まあ、本当はわかっているよ。何となくだけど」
それも納得出来る。二週間前、はっきりとお伝えしたのだもの。だから私は、葵さんが皆に呼び掛けてくれたことが七人のなかで間違いなく誰よりも嬉しかった。改めて背筋を伸ばす。
「今回の旅行、私のために集合をかけてくれたのですよね」
率直に切り出すと、葵さんは黙って私を見詰め返した。恭子さんは私達を交互に見比べる。
「恭子さん、事情は伺われておられますか」
問い掛けると、ざっくりとだけ、と此方へ視線を合わせた。
「咲ちゃんが皆で集まりたいって葵に打ち明けたとは聞いている」
「そうなのです。二週間前、葵さんにお話をしました。何人かで遊んだり、ご飯を食べたり、お酒を飲む時に感じる、と。足りないな、皆じゃないなって」
うん、と恭子さんが相槌をうつ。聞き上手ですね。
「そこへ、この旅行のご提案です。今朝、お誘いのメッセージを読んだ瞬間、確信しました。私のために考えてくれたのだ、と」
葵さんの表情は変わらない。ふむ、と恭子さんは自分の顎を軽く叩いた。
「だからどうしても直接お礼を伝えたくて、連日にはなりますがお邪魔しました。葵さん、今回のお話、本当にありがとうございます」
丁寧に頭を下げる。ややあって、うーん、と間延びした声が返って来た。姿勢を戻すと唇をもにょもにょさせながら頭を掻く葵さんと、その様子をニヤニヤと眺める恭子さんが目に飛び込んできた。あれ、何だか思っていたのと反応が違うな。てっきり、わざわざありがとう、咲ちゃんは真面目だね、なんて言われると予想していた。だけどこれは、どうもおかしいかも?
「あの……ありがとうございます?」
疑問系でお礼を伝えるのも妙だけど、口を突いて出た。葵、と恭子さんが声を掛ける。
「ううむ、咲ちゃんの純粋無垢な感謝の気持ちを手放しで受け取っても良いものか」
「いや手放しは駄目でしょ」
「だけど先輩面を崩したくない。……おい、恭子。何だその表情は。何か言いたげだな」
「べっつにぃ~。でも咲ちゃんには教えてもいいんじゃない? 大事な可愛い後輩でしょ」
「それはそうだが」
お二人が何を言っているのかさっぱりわからない。つくづく話に置いていかれる日だな。
「ほら、先輩。しゃんとなさいっ」
「わかったよ……」
深呼吸をした葵さんが私に向き直る。恭子さんは座っている椅子の背もたれに腕を回した。
「あのな、咲ちゃん。君のためを思って集合をかけた部分は勿論ある」
「はい。ありがとうございます」
すぐに答えると葵さんは言葉に詰まった。恭子さんは面白そうに眺めるばかり。やっぱりお二人とも様子がおかしい。ややあって葵さんは再び口を開いた。
「いや、まあ、そうなんだが。……実はさ、私自身が寂しくなっちゃったというか、その、一人になった時に何か嫌だなぁって感傷に浸ってしまったというか」
「……え?」
首を傾げる。葵さんの顔はみるみる内に赤くなった。要するにね、と恭子さんが話を引き取る。
「昨日、咲ちゃんと田中君を此処から送り出したのでしょう。その後、一人になったら凄く寂しかったんですって。それで、咲ちゃんと同じように、ずっと皆と一緒にいられるわけじゃないんだよなって思い至ったと。そうよね?」
葵さんは黙って頷いた。
「私と、同じ」
その言葉にまたしても頷く。
「で、酔っ払った私が綿貫君を引き連れて、たまたま突撃して来た。嬉しかったのと、寂しかった気持ちが押し寄せて、思い切って提案したんでしょ?」
「……あぁ、そうだよ」
低い声で応じた葵さんは、やれやれ、と髪をかきあげた。
「頑張って、旅行に行かないかって言い出したのよね。咲ちゃんの話を聞いた影響は大きかったと思うわ。だけど一番の理由は、葵自身が皆との楽しい思い出を作りたかったからなのよ。だから今、咲ちゃんに、私のためですよねって言われて歯切れが悪くなった。そして後輩達の前では先輩面を崩さないから弱い一面を見せたがらなかった。ね、葵。一人になって、寂しくなったのよね」
「うるせぇなぁ……」
「かーわいい」
ふん、とそっぽを向く葵さんの頬にはまだ朱が差している。そういうこった、とぶっきらぼうに続けた。
「咲ちゃんのためより私のためさ。一人ぼっちが寂しい弱虫が皆を付き合わせた。ただそれだけの話だ。だから君からお礼を伝えられてもどういたしましてと応えづらい。自分のために声を掛けたのだもの。わざわざ直接言いに来てくれた咲ちゃんにそのことを教えるのはどうかと思ったのだが、嘘を吐くわけにもいかず」
「結果、もにょもにょした、と」
茶化す恭子さんを葵さんが睨む。
「全部バラしやがって」
「格好をつけさせはしないわよー。もっと素の葵を知って貰いたい」
「後輩の前で醜態を晒すのは恭子一人で十分だ」
「誰が醜態よ」
「ブラ一丁の女が何か言ってらぁ」
途端に恭子さんの目が吊り上げる。怖いです。
「うっさい! ちょっとうっかり忘れただけだってば! 葵こそ、皆が旅行に乗り気な上に全員が全員、手伝いますよって申し出てくれたのを見て嬉しくて泣いちゃったくせに!」
なんと、泣いちゃったのですか。
「あ、コラ。それは秘密だろうが」
「ふーんだ、知らないもーん」
「何が、もーん、だ。いい年こいてクソガキみたいな喋り方をしやがって」
「あんたにだけは喋り方を指摘されたくないわよ!? それにいい年ってお互い様じゃないの!」
「それはそう」
「いや認めるんかい!」
ともかくだ、と葵さんは唐突に私へ向き直った。ふん、と恭子さんは鼻を鳴らす。
「私は私のために動いた。まあその結果、咲ちゃんの希望も叶う形になったな」
その言葉に自然と笑みが浮かぶ。
「全員集合、ですね」
「ありがたいよ、本当にさ」
「愛されているものねー葵」
「どうだか」
肩を竦めるけどその表情は照れ臭そうだった。私はといえばやっぱり嬉しくてしょうがない。ただ、少しだけ。
「何だか、私のためだって頭から信じ込んでいたのが自意識過剰みたいで恥ずかしいですね。ご自宅までお伺いしてしまいましたし」
先輩二人が顔を見合わせる。そうして揃って吹き出した。
「確かにそうねぇ」
「まあそう捉えてしまうのは仕方あるまい」
「あんたも電話が掛かってきた時点で説明をしなさいよ」
「正論過ぎて言い返せねぇや。飯、奢るから堪忍しておくれやす」
「いえいえ、お気になさらず」
三人で微笑み合う。そして、ただ何となく、会話も止まった。私達にしては珍しく微妙な空気が流れる。ええと、お手伝い出来ることでも訊こうかな。それとも夕飯の相談の方がいいかな。こういう瞬間は苦手なので、内心あたふたしてしまう。
「あぁ、そうだ咲ちゃん。メイド服、何着持っている?」
葵さんが急に質問を投げ掛けてきた。
「六着です」
「即答ね」
当然です。
「ん? ちょっと葵、まさか旅行先で私にメイド服を着せる気? フラットに楽しみたいからコスプレはパスしたいんだけど」
恭子さんの言葉を聞いた途端、胸に重いものが広がるのを感じた。葵さんは返事をしない。だから、あの、と私から切り出す。声が震えてしまった。
「恭子さん。もしかして、メイド服、お嫌いでしたか」
「あ」
慌てて手を口に当てられているけれど、もう本心は零れた後。
「ち、違うわよ。メイド服が嫌いなわけではなく、ただ久々の旅行だから気楽にのんびり過ごしたいなって思ったの。ほら、非日常的な格好をしていると落ち着かないじゃない。咲ちゃんや皆の視線も気になるし」
「好きな服を着ている時は周りから見て貰いたいもんだがな」
葵さんの言葉に、いやいや、と恭子さんは手を振る。
「その意見はお門違いよ。いえ、その通りだけど、メイド服を好きなのは咲ちゃんでしょ。私じゃない」
「つまり撮影会ではいつも好きでもなんでもない服を渋々嫌々着ていたわけか。見られたくねぇなって本当は思いながら」
「ちょちょちょちょちょ!」
恭子さんが慌てて葵さんに掴みかかる。
「そんな風には捉えていないってば! 今の解釈は流石に悪意がありすぎよ!?」
「そう聞こえる発言なんだもーん」
「あ、コラ。人をバカにしておきながら同じ喋り方をしおって」
「恭子の真似だもーん」
「くあぁ、ムカつく!」
肩を揺さぶられた葵さんは私を指差した。唇を噛み、俯く。あぁっ、と恭子さんの叫びが響いた。
「ねえ咲ちゃん、落ち込まないでよ。全然、嫌々着たりしていないってば」
「でも、視線が気になるって……メイド服姿を見られるのはお嫌いでしたか……そうとは知らず、私、お写真を何千枚も撮ってしまいました……」
「シンプルに多いな!」
「百点満点中一億点のメイド姿なんだもんなー」
「ですがご本人の意向を無視して撮影に及ぶなど、最もやってはいけない行為です……」
「いやあの、だから嫌じゃないって! ほら、何度も言ったでしょ。嫌だったらはっきり断るって。私、ちゃんと何度も着たじゃない。拒絶の意思は無いわよ!」
「紐ビキニみたいなドスケベ衣装も結局着たもんな」
「あれだけは二度と着たくない!!」
「拒絶してんじゃん。まあいいよ、写真に収めてあるから。いやぁ、何度楽しませて貰ったことか」
「生々しい話をしないでよ!?」
「眺めて悦に入っただけ。生々しいとかやめてくれよ……」
「何であんたが引いているのよ! 被害者は私よ!?」
「被害……」
「あ、お前、被害はひどいぞ。咲ちゃんが自腹を切って購入した服に対してその物言いは駄目だろ」
「だってぇ……」
葵さんが席を立ち、私の肩を抱いてくれた。
「可哀想な咲ちゃん。ほら恭子、嫌々じゃなかったんなら久し振りに着ろよ。メイド服。咲ちゃんと佳奈ちゃんも着るから」
「……え?」
今、とんでもない発言が聞こえた気がするのですが。ん? と恭子さんも首を捻った。葵さんのお顔を見ると、どこか遠くを眺めているような感じを覚えた。
「こないだ思い付いたんだ。三人にメイド服を着せて私を取り囲みお酌をして貰おうと。旅行の時にやって貰おうかな」
「バカじゃないの!? そういう店に行け! 店に!」
「関係性ありきの方がいい。親友の恭子、妹分の咲ちゃん、後輩力高めの佳奈ちゃん。あぁ、いいねぇ。魂が洗われるようだ」
うっとりと目を瞑られた。私も想像を膨らませてみる。メイド服に身を包んだ恭子さん、葵さん、佳奈ちゃんに取り囲まれてお世話をして貰うのか。恭子さんが髪を梳かしてくれる。佳奈ちゃんがお盆にお皿を乗せて持ってくる。それを受け取った葵さんが、咲お嬢様、揚げ餅でございますってしずしずと差し出して食べさせてくれる。あーん。
「……それは夢のような状況ですね……」
「何で咲ちゃんは肯定的なのよ!?」
「勿論、取り囲まれる側を希望します……」
立ち上がると葵さんの腕がほどけた。薄い肩を両手で掴む。葵さん、と至近距離で低く語りかけると、おぉ、と若干体を引いた。だけどしっかり捕まえて離さない。
「是非、お三方がメイド服を着て下さい。そして私に揚げ餅を食べさせて下さい」
「……着るのは恭子、咲ちゃん、佳奈ちゃんだろ」
「いいえ。葵さん、貴女もメイドになるのです。そして私を囲んでください」
「あ、やっべ」
「衣装はお持ちしますから、絶対に着て下さい。海辺のゲストハウスで三人の素敵なメイドさんに囲まれるなんて、う、想像しただけで鼻血が出そう」
瞳孔は既に開いているだろう。なあ咲ちゃん、と葵さんの顔がひきつる。
「望まない人にコスプレを強要するのは駄目なんだろ。私はパスを希望する」
「ずるいわよ! 私も今回はパス!」
恭子さんも全力で乗っかってきた。今まで撮影会の主役を張ってくれていた人に嫌がられるとショックですね……。
「お二人とも、そんなことは仰らずにぜひメイド服を」
「今回は無し。旅行の主旨がブレちゃうから。コスプレ大会じゃなくてあくまで遊びにいくわけだからさ」
「どの口が抜かしよるか」
「撮影……」
メイドさん達に囲まれての揚げ餅……。
「まあどうしても着せたいってんならサイコキネシスで拘束およびお着替えをさせるこった。その時、君は大切な自分のルールを破るわけだがな」
再び薄い笑顔を浮かべる葵さんをじいぃっと見詰める。
「焚き付けておいてひどいです。せめて、葵さんだけでもメイドさんになって下さい」
そして私と同じお部屋で過ごしましょう。
「慎んでお断りする」
がっくりと項垂れる。勝手が過ぎる、と恭子さんが後ろから葵さんの頭にチョップを食らわせた。
「欲望には忠実に。自分には正直に。そう生きようと思ってな」
「バカ。あー、釈然としないわ」
「そんならお前、メイド服を着るか?」
「今回はパス!」
「じゃあ私を責めるな」
「そりゃそうだけど何か腑に落ちないというか、スッキリしないのよね……」
葵さんが言い出さなければ立ち上がりもしなかった話だからですよ。そして私は期待を存分に持たされてから当の本人の手によって叩き落とされた哀れなメイドファンなのです。
それでも最後の望みを賭けてお二人を見上げる。
「本当にメイド服は着ていただけないのでしょうか……?」
「やだ」
「パス」
あんなに素敵なお洋服を着てくれないなんて、泣いちゃおうかな。でも無理強いは出来ない。だから、せめて抗議の意思を示そうと床に座り膝を抱えた。
「さぁて、そんじゃあ予約をしちまうか」
そう言って葵さんがノートパソコンを開いた。メイド服を。
「先に宿を押さえるわ。それが終わったら恭子、レンタカーの予約を頼む。私とお前で一台ずつ、な」
着てください。
「了解」
ソファに座った恭子さんはスマホを取り出した。
「秋の葉駅のお店を調べておく」
「頼むぜ」
「お任せあれっ」
静寂が訪れた。お二人は黙々と作業をしている。膝を抱えた私だけが床に取り残された。ついさっきまでの話には誰も触れない。それどころか言葉一つ発しない。当然、メイドのメも字も出てこない。部屋にはキーボードを叩く音だけが響いている。しばらくその状態を続けたのだけれども。
ゆっくりと立ち上がり恭子さんの隣に腰を降ろす。あの、と声を掛けるとちらりと此方を見遣った。
「私にもお手伝い出来ることはあるでしょうか」
「無いわね」
「……」
「体育座り、可愛かったぜ」
画面から顔を上げず葵さんがヤジだけ飛ばした。再び沈黙が訪れる。手持ち無沙汰で、自分のハンカチをサイコキネシスで空中に浮かべて物凄い勢いで回転させてみた。布が空気を裂く、甲高い音が鳴り渡った。
「うるせぇ」
「静かにして」
同時に怒られて回転をゆっくりにする。音は止まった。ハンカチは回し続ける。
「宿、取れた。確認メール、後で転送する」
「オッケー。さみだれレンタカーのアカウント、葵も持っていたわよね」
「ちょっと待ってろ。ええと、あぁ。持っている」
「じゃあそこで借りましょ」
恭子さんは立ち上がり、椅子を葵さんのお隣に置いた。そちらに掛け直す。私はポケットティッシュを取り出して、ハンカチの脇で回転させ始めた。
「コンパクトカーでいいわよね」
「充分。先に私、一台借りるわ」
「もう一台、あるといいけど」
「こればっかりは運だからなぁ」
レンタカーか。運転免許、結局取らなかったな。車が必要な仕事じゃないし、電車で充分事足りたから。それに私はどんくさいから交通事故を起こしかねない。そんな恐ろしいリスクを取るなら瞬間移動をフル活用する。勿論、バレない程度に、だけど。
「ほい、予約確定」
「じゃあ次は私ね。残っていろよぉ~」
「さぁ、結果は如何に」
「……よし! 台数有り!」
「幸先がいいなぁおい」
「予約予約っと」
お二人とも楽しそうだ。私はサイコキネシスで鞄を引き寄せた。あと、空中で回せそうな物はっと。
「はい、確定!」
「ふぅ、取り敢えず旅行に必要な物は最低限揃ったな」
「宿と足があればなんとでもなるでしょ。足りない物があったとしても買い出しに行けるわけだし」
「あー、何か一気に気が抜けた」
「安心して旅行を実施出来るわね」
あ、キーケースが出てきた。家と自転車と机の引き出しの鍵、三つが付いている。
「さて、そろそろ飯でも食いに行くか」
「そうね、もう七時半過ぎか。着替えて荷物を支度するわ」
「もう一泊していけよぉ~」
「何言ってんのよ寂しがり。明日も仕事よ。全員ね」
「そりゃそうか。昨夜泊まってくれただけでもありがたいわな」
キーケースを浮かべて回転を始める。途端に鍵同士がぶつかって激しい金属音を立てた。
「あぁ、あぁ」
慌てて止める。これは失敗だった。恐る恐るお二人を伺う。葵さんは頬杖をつき、恭子さんは腕を組んでいた。
「さっきから何をやってんだ」
「気を引こうとしていたんでしょ」
黙って頷く。その心は、と葵さんに問い掛けられた。
「お二方。やはり、メイド姿になろうと思い直しては貰えないでしょうか」
おずおずと切り出す。返ってきた答えは。
「やだ」
「パス」
「あんた、ひどいわね」
「お前に言われたくはない」
再度、がっくりと項垂れる。ハンカチとティッシュとキーケースが床に落っこちた。飛び出た鍵が大きな音を立てる。
「傷付けんなよ。人んちをさ」
「……ごめんなさい」
それ以上、何も言えなかった。
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