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「沈黙は同意と見なす。」視点:田中→メッセージアプリ。
作者注:わかりやすさを優先するため、本ページのメッセージアプリ内でのやり取りは本名での表記にしております。実際の彼らはアカウント名が表示されている状態でやり取りをしておりますね。
ちなみに、それぞれのアカウント名ですが。
葵 → 山科葵
咲 → saki
恭 → K.aki
佳 → Kana.t
田 → たな
橋 → brid
綿 → ふわ(わたぬき)
葵「恭子。お前のアカウント名、カキじゃん」
恭子「違うわよ! ちゃんとドットが入っているでしょ!」
葵「当たって腹を壊しそう」
恭子「やかましい!」
以上、余談でした。それでは本編を、どうぞ。
昼の十二時に集合してから三時間、俺と橋本と高橋さんで四種類のボードゲームを遊んでみた。橋本と高橋さんが同棲していた時に買った物だそうだ。
「泊まりで飲むならボドゲでも持って行きましょうか」
五日前の月曜日、突如橋本が七人に向けてメッセージを送った。珍しいこともあるものだ、と思いつつ誰か返事をするかと見ていると、ほう、と葵さんがすぐに反応をした。
「モノポリーとか、人生ゲームとかか」
似たような物を挙げるな、と少しおかしくなる。
「そうですね。ボドゲだったら、酒を飲みながら緩く楽しめるかと思います」
そこへ今度は咲が、緊張します、と割り込んで来た。何で、と初めて俺が返す。
咲 だってルールが覚えられるか不安で……。
葵 確かに。私も難しいものは面倒臭いから嫌だな。
橋 簡単な物を選ぶから大丈夫ですよ。そもそも皆、酔っ払ってわけわからなくなるでしょうし。
田 そりゃそうだ。絶対、べろんべろんになるよな。
俺の送ったメッセージに付いた既読は三つ。恭子さん、高橋さん、綿貫は仕事中かな。
橋 それに、複雑で時間のかかるやつより、単純でサクッと終わる方が盛り上がりやすいし。
葵 そうなのか?
橋 はい。
葵 恭子とメイドカフェに行った時、ちょっとだけ遊んでみたけどあんまり盛り上がらなかったなぁ。
橋 そもそも二人では出来るゲームも限られるでしょう。
葵 ちなみにあいつ、超弱いぞ。
田 そうなんですか?
橋 あ、ちょっとわかる。
葵 私も駆け引きは苦手だが、それ以上に恭子は突撃一辺倒だからな。
橋 イメージ通りですね。裏表が無くて素敵です。
田 隙あらば口説こうとするな、橋本。
橋 このくらいの褒め言葉は普通だよ。
葵 そうかぁ?
咲 私、素敵なんて言われたこと、無いよ。
橋 咲ちゃんは可愛いからいいじゃん。
田 彼氏の前で口説くの、やめてくれる?
橋 妬いてやんのー。
田 うっせ。妬くか。
葵 んで? 本題に戻るが酔っ払いにも出来るような物があるんだな?
橋 勿論。気軽にわいわい出来るゲームを選びますよ。
葵 君は何種類か持っているの?
橋 佳奈と二人で住んでいた時に結構ハマって買ったんです。
田 え、意外。
葵 そうだな。
田 ね。
橋 何が?
田 高橋さんってアウトドア派なイメージだった。いや何となくだけどさ。
橋 まぁ俺に付き合ってくれていただけかもねぇ。同棲解消の時、全部俺が貰ったし。
葵 ぶはは、完全に興味無ぇじゃんか。
咲 いえ、佳奈ちゃんは出て行った側ですからゲームを持って行く余裕も無かったのですよ。
葵 流石咲ちゃん、優しいねぇ。
佳 お疲れ様です! 丁度私の話が出てる!
葵 よぉ、お疲れ。仕事?
佳 はいっ、今終わりました。
葵 ご苦労さん。そんで君はボドゲに興味があったの? それとも渋々付き合っていた?
佳 楽しんではいましたよ。ルールを覚えるのは面倒でしたがその辺は聡太が理解して説明してくれましたから。
葵 ふうん。
田 これで結構頭が良いからな、橋本は。
橋 へへ。
葵 ずる賢いの間違いじゃねぇの。
橋 葵さんって俺に対する当たりが強くありません?
葵 誰に対しても似たようなものさ。
田 それくらいの扱いで丁度良いですよ。
橋 なんだよー。田中にだけルール説明をしてやらないぞ。
田 そりゃ無理だろ。七人、同じところにいるんだから。
橋 咲ちゃんにサイコキネシスですっ飛ばして貰えばハブれるって。ね、咲ちゃん。
田 そこまでして離席させたい!?
咲 出来るよ。
田 何で咲も乗り気なの!?
橋 田中は割とバカだから、俺の解説無しで新しいボドゲには触れられまい。
田 うるせえ。苦手なんだよ、理解するのが。
橋 やーいばーかばーか。
田 むかつくー!! お前だって中学の時、五十メートルを走るのに十秒近くかかったじゃねぇか!!
橋 十秒もかかってないよ。九秒八だよ。
田 変わんねぇよ!
橋 二桁と一桁を一緒にするな。
田 とにかく、お前も苦手なことはあるだろ。
橋 うん。
田 それについて他人をバカにするのは良くない。
葵 バカがバカに説法してらぁ。
田 あんた人の心が無いのか!?
咲 コラ。先輩に向かって、あんた、なんて言ったらいけません。
田 だって!
葵 えーん、田中君が私に向かってひどいことを言うー。
佳 うわっ、それこそ返しづらっ。
橋 葵さん、凄ぇっすね。
葵 あ、咲ちゃんが私の家へ来た。
佳 早っ。
橋 流石。
葵 心配して来てくれたんだって。
橋 相変わらずの葵さんラブっぷり。
葵 ありゃ。
佳 ?
葵 お礼に膝枕をしてやるって言ったら照れて帰っちゃった。
咲 お邪魔しました。
佳 何やってんの?
咲 えへへ……。
佳 笑って誤魔化すんだから……。
葵 かーわいぃ。
橋 そんで田中は急に発言しなくなったな。
佳 調子に乗ったって思っているのかな。
橋 うかつに喋るとまだ墓穴を掘りそうだから黙っているんでしょ。
葵 私の返しにビビっているだけだろ。
佳 いやあれは胸が痛くなりますって。
葵 気にすんな。むしろ私は一生あいつをこのネタでいじり倒す。
佳 こっちが居た堪れないんですけど……。
葵 佳奈ちゃんは気にしなくていい。
佳 葵さんが心配なんです!
葵 キツイに決まってんだろ。
佳 じゃあやめて下さいよ!?
葵 それも込みであの野郎をいじってやる。
綿 お疲れ様です! 何の話ですか?
佳 お疲れー。
綿 お疲れ!
葵 田中君をいじる会だよ。
綿 何で?
葵 バカだから。
綿 あぁ、成程。
田 納得すんな!
佳 あ、息を吹き返した。
綿 まあ、あんまり人をバカ呼ばわりするのは良くないですよ。
葵 君はいつでもいい奴だな。
綿 んなことないっすよ。
葵 田中君。橋本君。君達も少しは綿貫君を見習い給え。
田 え、嫌です。
橋 勘弁して下さい。
綿 何で!?
田 一番バカだし。
橋 空気を読めないし。
綿 失礼な! 俺程空気を読める奴もそうそういないぞ。
綿 何で誰も反応しないの?
橋 それが答えだろ。
田 沈黙が全てだ。
綿 ひどくない!?
咲 でも綿貫君は凄く気を遣ってくれるよね。
綿 ほらぁ!
橋 まあそれはそう。
田 うん。
綿 え? 手の平返し? 何だよー、早いなー。
田 ただ、気を遣った上に斜め上方向に着地すると言うか。
綿 ん?
橋 むしろ気を遣わない方が平穏無事に済んだと言うか。
綿 え?
田 まあそこがお前の魅力だな!
綿 どこが!?
橋 それが無くなったら綿貫じゃない。
綿 いやいや、俺はまともだって。この七人の中で誰よりもな!
綿 だから何で沈黙するわけ!?
葵 まあまあ。お仕事お疲れさん。遅くまで大変だったね。
綿 ありがとうございます。
葵 ボードゲームを持って行こうかって話をしていたんだ。君は遊ぶのかい? 綿貫君。
綿 好きですよ。
田 バカなくせに意外と強いんですよ。
橋 バカの割に作戦や戦略はきっちり立てるんです。
綿 いちいちバカって付けんなバカども!
田 バカにバカと言って何が悪い!
綿 お前程バカではない!
橋 やーいばーかばーか。
佳 聡太は人にとやかく言えない。
橋 あ、はい。
田 怖っ。
咲 君もだよ、田中君。
田 あ、はい。
綿 やっぱ彼女さん達はよく見ているねぇ。
恭 このメッセージの数は何事!?
葵 お、やっと来た。
咲 恭子さん、お疲れ様です。
佳 お疲れ様です!
恭 読むのに疲れたわよ!
葵 ははは。
恭 会社を出てスマホを開いたら百二十八件よ?
葵 多っ。
恭 一旦電車に乗って、追い付こうと読んでいる間にも話は進むし!
葵 そうだよなぁ。
恭 しかも葵! しれっと私をボードゲームの弱い奴って扱いにしたわね!
葵 うん。だって弱いもん。
恭 ものによるでしょ。
葵 ほぉ?
恭 先読みとか戦略とかは面倒臭いから苦手だけど、リアクションを取るやつとか、表現するタイプ、そう、演技とかは得意よ。
葵 そもそもそういうボドゲってやったことがあるのか。
恭 サークルの後輩と何度か部室で遊んだわ。
葵 それ、気を遣われていただけじゃねぇの。
恭 え?
葵 先輩が一生懸命演じたなら、後輩としては、わー上手―って言うしかないじゃん。
葵 早速黙っちゃったよ。どう思う、後輩諸君。
葵 誰か何か言えよ。
咲 きっと恭子さんの演技が上手だったのですよ。
葵 咲ちゃんは優しいねぇ。
佳 そうそう。駄目ですよ葵さん、ちゃんと素直に受け止めなきゃ。
葵 生憎、ひねくれ者なんでね。
綿 恭子さん、元気を出して下さい!
田 きっと恭子さんは演技上手です!
葵 あからさまに慰めにかかってんな。これはこれで喋り辛いだろ。
恭 うん……。
葵 お帰り親友。
橋 あ、じゃあそういうのも持って行きますね。
葵 そういうの?
橋 演技とかリアクションをするタイプのゲーム。うちにあるんで。
葵 おぉ、いいね。やろう。皆、恭子姉さんの大女優っぷりが見られるぞ。
恭 あ、コラ。プレッシャーをかけないでよ!
葵 だってお前が自分で宣言したんじゃんか。得意だってさ。
恭 いやそうだけど!
葵 後輩達も賛同していたなぁ。きっと恭子さんは上手でした、葵さんがひねた見方をしているだけです、って。なあ皆? そうだよな?
葵 沈黙は同意と見なす。
恭 やめて! いざ遊んだ時、絶対私に注目が集まるじゃない!
葵 そりゃ集まるだろ。得意だって豪語したんだから。
恭 無し! その発言! 無かったことにして! 皆、忘れて!
葵 橋本君、そういうゲームは面白そうだから必ず一つは持って来てくれ。
恭 あんたが面白がっているのは私をいじる方でしょうが!!
橋 了解でーす。
恭 やめて!
橋 あ。
葵 ん?
橋 俺なりにパーティ向けだなって思うゲームは選定しておきますが、一回遊んで他の人の意見も聞きたいな。
葵 お試し会か。
橋 今週末とか空いている人、いますー?
葵 む、それは無理だ。
橋 葵さんは空いてない、と。
葵 いや、私だけじゃない。恭子、咲ちゃん、綿貫君はしおり作りの打ち合わせだ。
橋 そういやそうでした。
田 ここで共有しただろうが。
橋 自分が関係無いと忘れちゃうんだよ。
葵 それをこの場ではっきり言えるのが橋本君だよなぁ。
橋 まあ別に急ぐわけでもないけど。ちなみに佳奈と田中は都合つく?
田 俺は平気。
佳 私も。
橋 じゃあこっちの三人でやってみて、良さげな物を選ぼうよ。旅行前に全員で遊んじゃったら当日楽しめないしさ。俺らで決めていいんじゃない? ね、葵さん。
葵 何故私に訊く。だが、そうだな。どんなゲームか、しおりチームには当日のお楽しみってことでいいんじゃないか?
咲 賛成です。
綿 異議なし!
恭 演技系はいらないわよー。
橋 じゃあそれで進めておきます。田中と佳奈、何時に集合する?
田 俺は丸一日空いている。
佳 昼頃に集合でいいんじゃない? ご飯、は済ませて来るとして、おやつとか食べながら遊べばさ。
橋 ゲームを汚さないでね。
佳 わかっているよ。
葵 よし、じゃあ今週の土曜日はしおりチームとボドゲチームに分かれて各自準備をしよう。
佳 承知しました!
橋 はーい。
咲 わかりました! 頑張ります!
綿 よろしくお願いします!
田 承知しましたー。
恭 オッケー。
葵 皆、ありがとう! よろしく頼む! じゃあ何か長くなったが楽しかった! お休み!
咲 はい、おやすみなさい。
佳 お疲れ様でしたー。
田 お疲れっした。
橋 おやすみなさーい。
綿 失礼しますっ、お休みなさい。
恭 お疲れー。
恭 いや私、割と話に参加し始めたばっかりなんだけど!?
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