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第5話 九十九の隠し事
梁に案内されたのは玉蘭の部屋だった。彼女に化けていた梁が寝ていた敷布はそのままで、梁はそれを無造作にどかしたと思えば……床の板を簡単に外した。その箇所には、何故か階段があったのだ。
「……地下か?」
紅狼が尋ねると、梁は一度頷いてから恋花の手をそっと握ってきた。思った以上に冷たい手に驚いてしまったが、人間とは違う生きている存在だと言われているのだから、温かさなどもないのかもしれない。
それに、意思の強い金の瞳で見つめられると、この先にあるものは恐ろしいものではない、と主張しているのだろう。少しばかり不安はあるが、後ろには出会ったばかりだが紅狼もいる。彼の事も信じて、恋花は小さく頷いた。
「……連れてって」
握られた手を、少しだけ力を込めて握り返した。顔はどうなっているのか鏡を見ていないからわからないが、梁が頷いてくれたので泣いてはいないのだろう。
彼がふっと息を吹いて、術で灯りをつけた。暗い階段の下まで幾つか灯していき……下へ下へと、ゆっくりと恋花のを導いて梁は降りていく。後ろから紅狼も付いてきてくれたので、お互い沓を履いているから土で作られた階段に当たると鈍い音が響いた。
どこまで続くかと思っていたが、意外と終わりは早く。
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