第7話 九十九を得て

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「大丈夫だ。俺は皇妃候補の従兄弟なんだ。あとまあ……それ以外の理由で皇帝陛下より許可は得ているから、心配はいらない」 「……そうなのですね」  家に紅狼が来て、宮仕えの提案をしてくれたあの日。  もうひとつの理由として、彼は皇帝の話題を出したのだ。 『玉蘭(ぎょくらん)殿にかけられた封印……もしかしたら、皇帝陛下の九十九が解けるかもしれない』  その言葉に、恋花は宮仕えの提案を受け入れた。元通りの生活にならないにしても、唯一の肉親である祖母を目覚めさせることが出来るのならば……何とかして、解きたいと決意したのだ。  宮仕えと言っても、侍女や下女ではなく『料理人』に加わる形になるらしい。玉蘭はかつて、後宮では指折りだと言われてた料理人だったとか。部下だったという料理人らに恋花は会ったことはないが、紅狼の話によると気さくな人間達が多いそうだ。それに、今は九十九である梁がいるから大丈夫だとも。  恋花は信じて紅狼の後に続き、朱塗りが目立つ造りの建物を迷子にならないように歩いていく。梁も横で浮きながら移動してくれているので安心は出来た。 (……私、の九十九)
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