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第9話 麺麭の受け入れ
崔廉が、料理人らにあんぱんを配っても良いか聞いてきたので、もちろんだと恋花は頷く。いくら彼女がここで働くことを許可しても、他の料理人らが納得するだろうとは思えないからだ。
梁も配るのを手伝ってくれたのだが、それぞれあんぱんを不思議そうに見つめていた。無理もないが、先の世には当たり前の食べ物を、恋花が再現したとは誰も思わないだろう。まだ、その事実は伝えてはいないが。
「あんたら、ひと口でもいいから食ってみな! この子は、あたしの師父である玉蘭殿のお孫さんだよ!」
「え??」
「あの玉蘭様の?!」
「……孫?」
余程有名なのか、祖母の名を崔廉が口にしただけでざわめきが広がっていく。今まで、ずっと玉蘭だと思っていたのは……己の九十九である梁が化けていた姿だったけれど。それでも、恋花と共に麺麭を作るのは楽しかった。その彼女の身体は、家で封印していては何か起きた時に対処しにくいからと、今は大きさを変えて梁の内側に収めてある。
だから、恋花は次に居場所を作るとしたら、この場所しかないのだ。
「……黄恋花と申します。お世話になります」
静かにお辞儀しながら言うと、料理人らからは驚かれた。特に不作法なことはしていないのだが、何かを意外に思われたのかもしれない。
だが、顔を上げる頃には、彼らはひと口ずつあんぱんを食べていて、すぐに賞賛の声を上げてくれた。
「美味い!?」
「お、美味しい!?」
「蒸して……いや、焼いて? すっごく香ばしいし、中の餡と合う!?」
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