第9話 麺麭の受け入れ

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「え、これどうやって作るの!?」  ざわめきがどんどん大きくなり、しまいには詰め寄られそうになった男性の行動に驚いてしまうと、彼の上から崔廉が音を立てるくらい強く拳を振り下ろした。 「全く、落ち着きな!? この子に今から作ってもらう。持ち場での仕事があるやつは戻れ!」 「……は、はいぃ……」  女性でも力が強いのだろう。拳を当てられた男性は、よろよろと動きながら奥の方へと行った。それに続くように、何名かの料理人らは持ち場へと戻ったり、その場で手にしてたあんぱんの残りを食べ続けていたりした。 「さ。恋花。材料は遠慮なく使っていいさ。同じようなものは作れるかい?」 「……いいのですか?」  焼き場などは、自宅にこしらえていた窯がないのは当然なので少し工夫しなくてはいけないが。それでも、似た方法で作るのは初めてではないから、大丈夫だとは思う。崔廉に確認の問いかけをすれば、彼女は口元に笑みを浮かべてまた肩を叩いてくれた。あの男性へとは違い、ぽんぽんと軽い感じだ。 「ああ、もちろんさ。あたしも手伝わせて……いや、材料を集める以外は止そう。あんたには、そっちの九十九がいるさね。一緒に作りやすい相手がいいだろう?」 「……ありがとうございます」 『是』  たしかに、梁としての存在のまま生活を共に出来たのはまだ数日でも。これまでずっと一緒だったのだから、頼りやすいのは本当だ。なので、崔廉に材料の場所をそれぞれ聞いてから、麺麭作りに取り掛かることにした。 「俺はまたあとで来る」
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